ワクチン製造関連拠点を次々誘致、フランスのサノフィが4億ユーロを投資へ

(シンガポール)

シンガポール発

2021年04月13日

フランス大手製薬会社サノフィは4月12日、向こう5年で4億ユーロを投じて、シンガポールにデジタル技術を活用した最先端のワクチン製造施設を設置すると発表した。新しい製造施設は2021年第3四半期に着工し、2026年第1四半期に稼働、新たに約200人を採用する予定だ。

サノフィの発表によると、シンガポールに設置する新しいワクチン製造施設は、完全デジタル化によって、3~4種類のワクチンの製造を同時並行で進行することができる。また、複数のワクチン製造技術を柔軟に採用できるため、その時々の公衆衛生の需要に応じて、必要なワクチンを迅速に製造することが可能だとしている。新製造拠点は、大手製薬各社が製造拠点を置く、医薬関連の専門工業団地「トゥアス・バイオメディカル・パーク」内に設置される。

同社は現在、シンガポールにアジア地域統括拠点や、製造と研究開発(R&D)施設などを置いており、約500人を雇用している。発表によると、新しい製造拠点からのワクチンは、経済開発庁(EDB)との協力により、主にアジア地域に供給される予定だ。EDBのベー・スワンジン長官は発表の中で、「サノフィがシンガポールにアジア発のデジタル技術を活用した製造センターを設置したことは、先端製造拠点としてのシンガポールの地位を評価するものだ」と歓迎した。

シンガポール政府、ワクチン、治療薬製造装置の誘致で各社と協議

シンガポールでは、米国医薬機器会社サーモフィッシャーサイエンティフィックが2020年10月に、ワクチンの無菌充填(じゅうてん)ラインの設置を発表するなど、政府が新型コロナウイルスの関連ワクチン製造関連拠点の誘致を積極的に進めている。チャン・チュンシン貿易産業相は4月5日、国会質問への書面回答で、ワクチンや治療薬の製造拠点の誘致に向けて、複数の製薬会社と協議していると述べていた。チャン貿易産業相は、ワクチンと治療薬関連の製造誘致が「ワクチンと治療薬製造に必要なニッチな技術を持つ人材育成への貢献だけでなく、地元のバイオメディカルサイエンス(医薬品・医療機器)産業を育成し、そのR&Dやイノベーション活動に貢献することで、将来のパンデミック対応に向け体制を強化できる」との認識を示した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

ビジネス短信 5cec058e5f8c81f2