バイデン米大統領、労組強化の大統領令署名、ハリス氏をタスクフォース議長に指名

(米国)

ニューヨーク発

2021年04月28日

ジョー・バイデン米国大統領は4月26日、労働者の組織化と権限強化に関する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。それに基づいてカマラ・ハリス副大統領を議長、マーティ・ウォルシュ労働長官を副議長とする政権内のタスクフォースを立ち上げ、180日以内に労働者の立場を強化する具体策を大統領に提出するよう指示した。

バイデン大統領は選挙キャンペーン中から、労働組合の強化を公約の1つに掲げていたが、政権発足以降は新型コロナウイルス対策と経済再建を最優先課題として取り組んできたため、政権としての具体的な労働組合政策はこれまで発表していない。今回の取り組みはそのためのてこ入れとみられる。政権が発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、約6,000万の労働者が組合加入の選択肢を提示されれば加入する意思があるにもかかわらず、労働者は組合の結成や団体交渉で高い障壁に直面してきたと指摘し、結果として、組合の組織率は1950年代の30%以上から2020年には10.8%まで落ち込んだとしている。

タスクフォースは、(1)連邦政府自体が労働者に対して組合結成と団体交渉を促す雇用主としての見本となる、(2)省庁横断の取り組みを通じて全米での組合結成を円滑化する、(3)抑制的な労働法制が敷かれているコミュニティーにおける労働者の立場を強化する、(4)全米の組合参加者数を増加させる、の4点を目標として、次の2つの側面から大統領に政策提言を行う。

  1. 連邦政府における労働者の立場強化、組合の結成、団体交渉を支援するために活用できる既存の政策や制度などを特定する。
  2. 組合の結成、団体交渉をより効果的に支援するための新たな政策や制度、または必要な既存の政策や制度の変更を特定する。

米国の労働組合を代表する米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ会長は26日、政権の取り組みを支持し、協働していくとの声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。ただし、最も重要な政策としては、議会で現在審議されている「団結権保護法案(PRO act, H.R.842)」を成立させることだと強調している。同法案は、雇用主が労働者の権利を侵害した場合に罰金を科すことや、労働者の団体交渉権を拡大する内容を含んでおり、バイデン大統領も支持している。同法案は3月に下院で可決、上院に送付されたが、議事妨害(フィリバスター)を抑え込むために必要な60票を獲得する見通しは立っていない。

(磯部真一)

(米国)

ビジネス短信 51b0b8d8eca23036