トヨタ、CAF主導の水素電車開発に燃料電池システムを供給

(スペイン)

マドリード発

2021年04月27日

トヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME、本社ベルギー)は4月7日、参画するEUの鉄道向け燃料電池ハイブリッド電源開発プロジェクト「FCH2RAIL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に、水素燃料電池(FC)システムをパッケージ化したFCモジュールを提供すると発表した。同製品には水素燃料電池車「MIRAI」の新型モデルのFCシステムが応用されている。

架線給電にも対応、ゼロエミッションの水素電車

「FCH2RAIL」は、EUの研究開発資金助成制度「ホライズン2020」の採択プロジェクトとして、2021年から4年間、予算額1,334万ユーロ(うち70%をEUが助成)で実施されている。TMEのほか、スペインの鉄道車両製造CAF、スペイン国鉄、スペイン鉄道インフラ管理公社(ADIF)、スペイン国立水素研究所(CNH2)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)など欧州4カ国8社・機関が参加。水素FCモジュール(TME製)とチタン酸リチウム蓄電池モジュール(CAF製)を搭載したハイブリッド電源システムのプロトタイプを開発し、試験や実証を行う。電車と機関車のいずれにも適用でき、旅客・貨物輸送の両方に対応できる拡張性の高いシステムを目指す。

プロジェクトでは、CAFが2000年代に開発・製造したレンフェの都市近郊型電車に電源システムを組み込む。電化区間では、従来の架線からの給電と、非電化区間では水素燃料電池および蓄電池を動力源とする、バイモード(2方式)の車両に改造する。同車両は、全区間をゼロ排出で走行できることになる。

規格策定にも積極的に働き掛け

軌道試験はスペイン、ポルトガルで行い、ハイブリッド電源システムや2方式走行のエネルギー効率を最適化し、スペインとポルトガルを含む3カ国での運用認可取得を目指す。さらに、水素技術と架線給電を安全に共存させるための基準・規格面の課題を特定し、設計から認可までの段階に反映させるとともに、EUの鉄道向け燃料電池技術規格の作業部会に積極的に提案を行っていくとしている。

欧州の鉄道網全体の電化率は50%強だが、既に列車運行量の80%が電化区間を利用している。非電化区間の電化は費用対効果が低い場合も多いとされており、こうした区間ではディーゼル列車が重要な役割を果たしている。同プロジェクトでは、路線の電化をせずに脱炭素化にも貢献し、かつコスト競争力も高い選択肢を実証することが重要な目的になっている。

なお、CAFはプロジェクト終了後の水素電車実用段階で、「EU復興基金に約2億8,000万ユーロを申請する予定」(「エクスパンシオン」紙4月20日)としている。

水素バスでも存在感

TMEは燃料電池バスの分野でも、2018年からポルトガルのバス製造企業カエタノ・バスへのFCシステム供給を開始して水素バス商用化(2019年10月)に協力したほか、2020年12月には欧州でトヨタの燃料電池バスの開発・製造・販売を加速させるべく、同社への出資を通じ提携を強化。一方、CAFも2018年9月にポーランドの電気バス製造企業ソラリスを買収し、ドイツやイタリア、東欧のバス市場への足掛かりを得ている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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