2020年の東南アジア6カ国のスタートアップ投資、「新型コロナ禍」でも前年並み

(シンガポール)

シンガポール発

2021年04月08日

シンガポールのベンチャー・キャピタル(VC)、セント・ベンチャーズのレポート(3月26日発表)によると、2020年の東南アジア6カ国へのテック系スタートアップへの投資額は総額で82億ドルと、「新型コロナ禍」であっても2019年の投資総額(85億ドル)をわずかに下回る水準を維持した。2020年の投資案件数は645件と、前年の704件を下回った(添付資料図参照)。

国別では、インドネシアへの投資が最大で、投資総額の70%を占めた。次いで、シンガポール(14%)、マレーシア(5%)、タイ(5%)と続いた。投資案件数では、シンガポールが37%と最大で、次いでインドネシア(27%)、マレーシア(12%)、タイ(6%)だった。

東南アジアへのテック投資は2020年も引き続き、10億ドル以上の大型投資案件が投資全体を牽引した。2020年の10億ドルへの投資額は計47億ドルと、投資総額の57%を占めた。主な投資案件としては、シンガポールのスタートアップで、配車アプリやフィンテックなどスーパーアプリのグラブへの大型投資や、インドネシアのスーパーアプリのゴジェック、インドネシアの電子商取引のブカラパックなどの大型投資があった。

分野別では、スマートフォンのアプリ上にさまざまな機能を持つ、スーパーアプリへの投資が全体の投資額が40億ドル以上と、全体の約半分を占めた。また、2020年には「新型コロナ禍」で需要が高まった電子商取引などインターネットエコノミーを支えるペイメントが前年比94%増、物流への投資が2.45倍と、投資マネーを集めた。一方、渡航規制で大きな打撃を受けた旅行は、48%減だった。インドネシアのオンライン旅行サイトのトラベロカへの大型投資があったが、同投資を除く旅行分野への投資は95%減の大幅落ち込みになった。

2021年の見通しについてセント・ベンチャーズは、同レポートにおいて、2021年中に新型コロナウイルスの感染が落ち着けば、年内にも「VC投資の伸びが再開し、一部大型エグジット(M&Aや新規株式公開)もあり得る」との見方を示した。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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