メキシコ政府、全ての映画作品にスペイン語字幕の付記を義務付け

(メキシコ)

メキシコ発

2021年03月30日

メキシコ政府は3月22日、連邦映画撮影法第8条の改正を官報公示し、国内の映画館で公開される全ての映画作品にスペイン語字幕の付記を義務付けた。5月20日に発効する。聴覚障害者が健常者と同等に映画を楽しむことができるようにするという目的で、国会議員から改正法案が提出され、2月16日に議会承認されていた。

字幕の付記義務をめぐり業界は懸念

今回の改正によって、上映される全作品にスペイン語を付記しなければならなくなるため、通常は字幕が不要なスペイン語の作品もこの対象となる。また、子供向け作品と教育目的のドキュメンタリー作品の場合、字幕の付記に加えてスペイン語への吹き替えも義務付けられた。下院議員で改正法案の提出者の1人である、メキシコ映画撮影文化委員会のセルヒオ・ブレトン委員長は「字幕付記を義務付けることで、240万人の聴覚障害者が映画館で映画を楽しめるようになる」と述べた(「エル・エコノミスタ」紙3月23日)。

他方、メキシコ映画・ビデオソフト協会(CANACINE)は3月23日のプレスリリースで、もともとスペイン語である作品にまで字幕を付記することは制作会社や配給会社に大きな負担となるとして、業界の懸念を示した。

コロナ禍で映画業界に大きな影響

メキシコにおける新型コロナウイルス感染発生直後の2020年4月から、映画業界は大きな影響を受けている。人口2,160万のメキシコ市首都圏では、長期間にわたり映画館が閉鎖された。感染警戒信号の色によって開館の可否や収容可能上限が定められている。2021年3月24日現在、メキシコ市での収容上限は30%となっている。こうした状況下で、業界2位のシネメックス(Cinemex)は2月11日、メキシコ国内の335店舗のうち145店舗を順次、閉鎖すると発表した。

(志賀大祐)

(メキシコ)

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