スイス国民投票、EFTA・インドネシア包括的経済連携協定(CEPA)を可決

(スイス、インドネシア)

ジュネーブ発

2021年03月10日

スイスで国民投票外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが3月7日に実施され、「公共の場で顔を覆い隠すことの禁止」イニシアチブ(国民発議)と、「電子身分証明書サービス(e-ID)法」、「EFTA(注1)・インドネシアの包括的な経済連携協定(CEPA)」に関する2つのレファレンダム(注2)の投票が行われた。それぞれ、51.21%で可決、64.36%で否決、51.65%で可決された。

1つ目は、ブルカやニカブ(注3)の公共の場での着用禁止を念頭に置いたイニシアチブで、過激なイスラム主義や、主義にかかわらず顔を隠して行われる犯罪を防ぐためとして、スイス国民党などから結成される「エーカーキンゲン委員会」が提案していた。

欧州の複数国では既に公共の場でのブルカの着用を禁止する法律が成立しているが、スイスでは一部の州が禁止しているのみだった。連邦参事会(内閣)およびほぼ全ての政党が、イニシアチブの内容は行き過ぎているとして反対票を投じるよう国民に呼び掛けていた。加えて、身元確認が必要な場合に警察は当人に覆いを外すよう求めることができ、拒否した場合には最高1万スイス・フラン(約117万円、CHF、1CHF=約117円)の罰金を科すこと、などを対案として採択していた。今回の可決を受け、健康、安全、天候上の理由がある場合、礼拝所など一部の場所での着用を例外として、公共の場所で顔を隠すことは禁止される。

2つ目は、電子身分証明書サービス(e-ID)に関する連邦法に関するレファレンダムだった。この法律は、銀行口座の開設やネットショッピングなどにおいて、利用可能な電子身分証明書の発行について定めたもので、2019年に議会で可決済みだったが、民間企業がe-IDの発行者になることなどを懸念した反対派によって、レファレンダムが提起された。連邦参事会は、可決済みの法律を支持する賛成票を投じるよう国民に呼び掛けたが、全ての州が反対する結果となった。

3つ目は、EFTA(欧州自由貿易連合)とインドネシアとの包括的な経済連携協定(CEPA)の締結可否を問うレファレンダムだった。本協定は2018年12月に署名済みだったが、インドネシア産パーム油に対する関税引き下げが環境破壊につながるとして、農業団体「ユニテール」が国民投票を提起していた。本協定には、持続可能な貿易を実現するための、生産地での生態系の保護、森林伐採の阻止に関する基準が示されており、基準を満たしたパーム油のみが関税削減の適用を受けることができるとして、連邦参事会と議会は国民に賛成票を投じるよう呼び掛けていた。今回の可決を受け、速やかに協定の批准手続きに入る。

写真 インドネシアとのEPA賛成を訴える、スマトラトラとスイスの熊が抱擁を交わすポスター(ジェトロ撮影)

インドネシアとのEPA賛成を訴える、スマトラトラとスイスの熊が抱擁を交わすポスター(ジェトロ撮影)

(注1)加盟国は、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国。

(注2)議会が可決した法律の是非について、国民が投票するもの。

(注3)イスラム教徒の女性が着用する、顔や全身を覆う衣装。

(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)

(スイス、インドネシア)

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