複雑化する従業者報酬の仕組み、ジェトロ主催セミナーで弁護士らが講演
(ドイツ)
知的財産課
2021年03月29日
ジェトロは3月22日、ドイツの知的財産権法・労働法を専門とする弁護士と弁理士を講師に迎え、ドイツ従業者発明法に関するセミナーをオンラインで実施した。
一般に従業者発明(注1)で特許を受ける権利(注2)は、発明の完成時点では発明者の従業者に帰属する。各国の法制により、使用者が特許を受ける権利を発明者から譲り受け、特許発明を利用した事業を実施などすることにより、発明者は報酬を受け取ることができる場合がある。
CBH法律事務所の弁護士のクアト・バーテンバッハ教授は、ドイツ従業者発明法では、発明者たる従業者は特許を受ける権利を譲渡するのみでは報酬を受け取る権利を有さないが、譲渡した特許発明を、当該従業者を雇用する企業(使用者)が実施することにより、報酬を受けることができると説明、その額は発明の価値や、発明者持ち分、使用者の発明への貢献度合いを考慮して算定した額になるとした。同事務所のイェンス・クンツマン弁護士は、発明者たる従業者への報酬支払い義務が課せられるのは、その従業者へ給与を支払っている使用者であり、報酬額は発明を使用者が実施することで得られた利益の額に基づくのが基本だが、使用者が企業グループの中で他のグループ企業のために研究開発を行っている場合などでは、異なる算定基準が適用になる場合があることなどを説明した。
BOEHMERT & BOEHMERT法律事務所の弁理士のハインツ・ゴッダー教授は、現代の複雑化した企業活動の実態に合わせるべく、ドイツ従業者発明法の改正が検討されていて、現在、労働組合と経営者団体との間で交渉が行われており、2021年秋の総選挙後に、新政権下でドイツ従業者発明法の改正が実現する可能性があると説明した。
講演に対して、会場からは、ドイツに子会社を持つ日本企業でのドイツ従業者発明法の適用可否に関する質問などが多く寄せられた。
(注1)企業の従業員による発明。
(注2)特許権付与を請求するための権利で、この権利を保有せずに特許出願をしても、基本的に特許権を取得することができず、また、特許権取得後に特許を受ける権利を有していないことが明らかになった場合には、特許権が無効となり得る。
(渡辺浩司)
(ドイツ)
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