英テック企業向け投資が「新型コロナ禍」でも活況、国外からの投資は6割超に

(英国)

ロンドン発

2021年03月22日

英国コンサルティング企業のテック・ネーションは3月16日、英国のハイテク産業に関する統計データなどを集めた年次レポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開した。同レポートでは、テック企業への投資額に関する世界各国の比較や分野ごとの投資トレンド、新型コロナウイルスや英国のEU離脱(ブレグジット)が産業に与えた影響などに着目している。

2020年のテック企業へのベンチャーキャピタル(VC)投資額において、英国は149億ドルに上り、米国(1,443憶ドル)、中国(445億ドル)に次ぐ世界3位を占める。同じ欧州のドイツ(66億ドル)やフランス(56億ドル)と比しても、英国が大きく上回る結果となった。時期別にみると、新型コロナウイルス感染拡大に伴う不確実性の高まりから、上半期の投資額は低調となったものの、下半期に大きく回復している。また、都市別では、ロンドンが106億ドルで、サンフランシスコ(216億ドル)、北京(166億ドル)、ニューヨーク(152億ドル)に次ぐ世界4位となっている。他方、これらの都市は全て前年比で減少しており、主要国内で地域的な分散が進みつつあることがうかがえる。

テック・ネーションのジェラード・グレッチCEO(最高経営責任者)は「(新型コロナウイルスなどの)世界的危機に直面しながら、テック産業は生き残っただけではなく、多くの分野で活況だった。教育産業(EdTech)から健康産業(HealthTech)まで、技術系のスケールアップ企業(注)は、英国経済の再構築および世界標準確立の中心となっている」とコメントしている(「フィナンシャル・タイムズ」紙3月16日)。

現在、政府により上場規制緩和を推し進められているロンドン証券取引所(LSE)においても(2021年3月16日記事参照)、テック産業の存在感は増している。2020年、LSEで新規株式公開(IPO)を通じて調達された資本のうち、テック企業および消費者向けインターネット企業が全体の約40%を占めた。

しかし一方で、英国テック企業へのVC投資の外貨割合は年々増加傾向にあり、2016年は約50%だった国外からの投資が、2020年には63%に増加した。こうした点に関し、本レポートでは、国際的評価の高さを示す一方で、国家安全保障面で警鐘を鳴らしている。

新型コロナウイルスやブレグジットの影響を受けたにもかかわらず、活況が続く英国テック市場だが、英国政府は今後、さらなるサポートを計画する。フィンテック分野において高成長企業での人材を確保すべく、2022年3月までに同人材のファストトラック(優先審査)ビザ制度を導入するとしている(2021年3月12日記事参照)。

(注)スタートアップのうち、急速に成長を遂げた企業。

(尾崎翔太)

(英国)

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