ジェトロ、大阪・関西万博に向けたシンポを開催

(日本)

大阪本部事業推進課

2021年03月30日

ジェトロは3月3日、2025年日本国際博覧会協会(以下、万博協会)との共催で、「コロナ後の未来社会、EXPO2025への期待、関西の可能性~世界との共創、そしてSDGs達成へ~」と題するオンラインシンポジウムを開催した。45カ国から約1,700人が参加する中、アフター・コロナにおける大阪・関西万博の意義、SDGs((持続可能な開発目標)達成に向けた国内外企業の「共創」の重要性、イノベーション拠点としての関西地域の可能性を発信した。

新型コロナ禍により、世界的課題解決のための企業参加、国際連携への意識高まる

万博協会の石毛博行事務総長が冒頭のあいさつで、2025年4月13日から大阪で開催される大阪・関西万博が「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げていることを紹介。「新型コロナ禍」により世界が分断され、争いや格差が顕在化する中、「多様性を尊重しつつ、一つにつながること、協力し合うこと、共創することの重要性」を強調した。ジェトロの佐々木伸彦理事長は、大阪・関西万博はSDGsが達成された社会を目指しており、気候変動や環境、経済格差、感染症対策など世界共通の課題に対しては、政府のみならず、民間企業がビジネス機会として参加することの重要性に言及した。

基調講演では、ジュネーブ国際高等問題研究所のリチャード・ボールドウィン教授が、「新型コロナ禍」によって人の移動が難しくなった中、デジタル化や人工知能(AI)、ロボットの導入が進み、先進国のサービス産業で国際間分業や雇用喪失が人々の想像を超える速度で進んだと説明。一方、世界各国では「新型コロナ禍」という苦しみをほぼ同時期に経験したことにより、人々の間に国を越えた共感や協調意欲が高まっており、世界共通課題の克服に必要となる国際連携への機運は高まったと言及した。大阪・関西万博プロデューサーの1人でもある大阪大学の石黒浩教授は、大阪・関西万博には世界中のあらゆる人が集まり、多様な人間の未来と多様ないのちの在り方について議論する場が用意されると紹介。コロナ禍のような人々の移動が難しい時代でも、国外旅行が難しい貧しい人でも、参加が可能となるよう物理会場でのアバターの活用や、仮想会場の用意を進め、「時間的・距離的制約を克服し、自由に多様な人が参加できる万博」を目指したいと述べた。

国際機関や海外企業、世界的課題解決に貢献する日本の技術に注目

シンポジウムの後半は、「関西地域がいかに世界と共創し課題解決に貢献できるか」をテーマに議論が行われた。冒頭の事例紹介では、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)のグローバル・イノベーション部門とテクノロジー部門代表であるヨナス・スヴェンソン氏が、2020年にグローバル・イノベーション・センター(GIC)を神戸に設立した経緯を説明。「日本を含む高所得国では、出口(市場)を意識した研究が中心であり、日本でも技術開発は政府や大学、大企業が主導してきた」とした上で、「世界的課題を解決しようとすれば、目の前の課題解決へのソリューションを考え、自ら事業を起こしたいという低所得国でよく見られる『アイディア中心のイノベーション』に先進国の企業や大学が参加するべき」と言及した。GIC神戸はアイディア発表会(ピッチ)や企業交流会などを開催し、国内外の有力スタートアップ企業をつなぐ役割を果たす。続いて、マレーシア大手複合企業で都市開発も手掛けるSUNWAYグループのチーフ・イノベーション・オフィサーのマット・バン・ルーウェン氏が、同社グループの大学や企業、ベンチャーキャピタルを連携させながら、都市開発の中で教育や医療、Eコマース、農業、金融などの分野の先端サービスを創造しようとするプラットフォーム「iLAB」を紹介。同社はジェトロとも連携しており、2020年までに日本のスタートアップ企業2社が同社エコシステムを活用しながらマレーシアに進出済みと紹介。海外のスタートアップを巻き込みながら成長する都市づくりの一例を示した。

本シンポジウムの様子は、ジェトロウェブサイトで2021年4月30日まで公開されている。

(福山豊和)

(日本)

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