全国経済人連合会、韓国半導体産業の対応戦略をセミナーで議論

(韓国)

中国北アジア課

2021年03月31日

韓国の全国経済人連合会(全経連、日本の経団連に相当)は3月30日、「半導体産業が揺れる-半導体産業のパラダイムと未来」と題したセミナーを開催した。全経連は目的について「最近、自動車産業を中心に半導体の需給バランスが悪化しており、米国のインテルが半導体ファウンドリー事業への再進出を宣言するなど、世界の半導体市場勢力図の変化が早まっており、対応戦略を議論するためセミナーを開催した」と説明した。

全経連のクォン・テシン副会長はセミナー冒頭のあいさつで「米国や中国など世界大国の半導体産業育成競争が激化する中、われわれも過去の成功に酔っていてはならない」と警告し、「半導体産業は大規模投資とタイミング、人材が成否を左右する」と強調した。

基調講演で、サムスン電子社長や政府の情報通信部長官を歴任したスカイレイクインベストメントのチン・デジェ代表が「半導体技術の人材を育成し、産業を先導する企業を後押しする政策環境が整えば、世界の半導体覇権を握ることができる」と述べた。一方で「中国が2015年に半導体産業の強化を宣言し、数百兆ウォン(数十兆円)規模の投資で韓国半導体を追撃しているが、米国の制裁と低い技術自給率の限界から、思いのほか時間を要しているため、この機会を逃してはならない」と付け加えた。

現代車証券のノ・グンチャン・リサーチセンター長は「主要国政府の半導体産業育成の動きに注目すべき」と強調し、各国の現状を次のように説明した。

  • 米国は、短期的には貿易制裁を通じて中国の牽制に成功したが、中長期的にはファブレス(半導体設計)に現在偏った半導体産業構造を再編し、米国内の生産設備への投資誘導と製造競争力強化を推進するとみられる。そのため、2024年まで投資額の40%程度を税額控除し、半導体インフラとR&Dに228億ドル規模の支援を行う計画。
  • 中国は2015年に「中国製造2025」を掲げ、2025年までの半導体自給率70%達成目標を設定して投資を継続してきたものの、市場調査機関IC Insightsによると、2019年時点の中国の半導体自給率は15.7%にとどまる。しかし、過去のLCD産業強化に成功した経験を踏まえ、大型M&Aの推進·半導体国産化の拡大を図っている。
  • 欧州諸国も、アジアのファウンドリー企業への依存度を減らすべく、ドイツ、フランス、イタリア、オランダなどが最大500億ユーロを投資することで合意。うち半導体企業の投資金額の20~40%を補助金のかたちで支援する予定。

また、ノ・センター長は、車載用半導体の供給不足について、各国政府の要請で台湾積体電路製造(TSMC)など台湾のファウンドリー企業が生産ラインの再調整を通じて増産したことから、2021年7月ごろ以降は供給不足が緩和されるものとの見通しを示した。

パネルディスカッションでは、半導体の専門家による「韓国半導体の未来に向けた対応策」についての議論が行われた。専門家の共通する意見として、「韓国は世界最高のメモリー半導体技術を有している一方、システム半導体など非メモリー部門の競争力が弱い」ことが指摘された。韓国半導体産業協会のアン・ギヒョン専務は「韓国もシステム半導体の生産体制を迅速に構築し、電子産業のサプライチェーンにおけるシステム半導体の役割を拡大させるよう、官民が協力すべき」と提言した。

(友田大介)

(韓国)

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