欧州産業界、欧州委の新デジタル目標への期待と注文を表明

(EU)

ブリュッセル発

2021年03月16日

欧州委員会が3月9日に「デジタル・コンパス2030」目標を発表した(2021年3月12日記事参照)ことを受けて、欧州産業界からは同日、デジタル職能訓練・インフラ整備、イノベーションを生み出しやすい環境作りや中小企業のデジタル化への支援などを期待する声が上がった。

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)はツィッターで、目標の達成には、デジタルスキルと最先端のデジタルインフラの整備に集中すべきだとして、加盟国は、社会に貢献するデジタル経済の再構築のため、同目標を触媒として十分に活用にすべきだとした。

欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は、十分なデジタルスキル訓練、イノベーションの促進につながる法制枠組みや機能するデジタル・エコシステムに基づいた包括的な取り組みが必要だと欧州の目標を歓迎外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。その上で、欧州は、若いIT人材が活躍する米国のシリコンバレーや中国の珠江デルタに後れを取っているとして、特に、イノベーションに有利な環境をつくることは、強いデータ経済、そして欧州のデータ主権の保障のためには必須とした。

情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは、「デジタル・コンパス2030」目標によって「正しい道を進み出した」と評価外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、具体的な数値目標が設定されたことを「よいスタート」としつつも、研究開発への資金提供などについては設定されなかったことに失望感を表明した。一方で、現代のデジタル経済においては「規模とスピードが重要」として、新たに提案された大規模プロジェクトなどへのEU・加盟国予算の柔軟な活用や民間投資を促進する「複数国プロジェクト」に期待感を示した。さらに、「新型コロナ危機」からの復興基金などにおいて、かつてない規模でデジタル化へEU予算が割り当てられていることを強調し、加盟国が野心的な計画を策定し、目標を達成できるように、欧州委の審査・指導力が重要だとした。

また、小売・卸売業界の団体ユーロ・コマースは、同業界にとっては中小企業のデジタル化への支援、最先端のデジタルインフラの整備とデジタル技能訓練が必要だと訴えた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。特に「新型コロナ危機」を経て、電子商取引(EC)の増加など、消費者行動が変化し、同業界のデジタル化の重要性が明確になったが、オンライン販売の開始や販売のオムニチャンネル化(注)には多額の初期投資などが必要となるとし、EUおよび加盟国からの支援を求めた。

(注)実店舗やECサイトなど、複数の流通経路を連携させて顧客にアプローチし、販売につなげること。

(滝澤祥子)

(EU)

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