米ニューヨーク市の芸術・娯楽産業の雇用、新型コロナで66%減

(米国)

ニューヨーク発

2021年03月02日

米国ニューヨーク州会計監査官室は2月24日、新型コロナウイルス感染拡大によるニューヨーク市の芸術・娯楽産業への影響を分析した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。報告書によると、同産業の雇用者数は、2020年12月時点で前年同月比66%減少した。他のどの産業よりも雇用が減少しており、政策当局からの直接かつ力強い支援が必要としている。

報告書によると、2019年には同市内の6,250の施設で9万3,500人が芸術・娯楽部門に従事していた。しかし、2020年3月22日に州全域を対象とする外出禁止令が発令された後、4月に同部門の雇用者数は3万4,100人にまで急減した。その後も雇用は回復せず、2020年12月時点の雇用者数は1年前と比較して66%減少した。他部門と比較して、最大の減少率となった(注1)。報告書は、2020年3月以降に約60%の施設が閉鎖(注2)された(2021年2月時点)とするソフトウエアサービス企業ウォンプリーの推計に言及している。

地区別にみると、同部門の雇用の76%が集中するマンハッタンへの影響が大きい。ブロードウェイ沿いのほとんどの劇場は、早くとも2021年6月まで再開する予定はなく、メトロポリタンオペラとニューヨークシティバレエ団は、2021年9月まで再開しないことを発表している。

苦境にあえぐ芸術・娯楽部門の企業への連邦政府の支援について、報告書は、ニューヨーク市の同部門の企業の62%が給与保護プログラム(PPP)による融資を既に受けていると指摘している。2020年末に成立した追加経済対策(2021年1月4日記事参照)では、同プログラムに新たに2,840億ドルの予算が充てられたほか、閉鎖された芸術団体(ライブ会場や映画館、美術館)に対する150億ドルの助成金支給が含まれている。また、ニューヨーク州政府のプログラムでも、失業したアーティストなどに対する助成金支給などの支援策が実施されている。

今回の報告書をまとめた、ニューヨーク州会計監査官のトーマス・ディナポリ氏は「連邦政府や州、自治体のプログラムは正しい方向への方策だが、(芸術・娯楽部門の)明かりをともし続けるためにはさらなる支援が必要だ」と述べている(「ニューヨークデイリーニューズ」紙電子版2月24日)。

(注1)ニューヨーク州労働省の発表によると、2020年の年間のニューヨーク市の雇用増減率は、芸術・娯楽部門が属する娯楽・接客業全体では47.6%となっており、宿泊・フードサービス(43.1%)、製造業(17.5%)、商業・運輸・公益事業(13.0%)、天然資源・鉱業・建設業(12.2%)などその他の業種と比べても減少率が大きい。

(注2)一時的な閉鎖を含む。

(宮野慶太)

(米国)

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