2020年の米LNG輸出量は前年比3割拡大、アジアが最大の輸出先に

(米国)

シカゴ発

2021年03月25日

米国エネルギー省は3月15日、エネルギー情報局(EIA)のウェブサイト「トゥデイ・イン・エナジー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、2020年の米国の液化天然ガス(LNG)輸出量(天然ガス換算)が前年比31%増加し、地域別ではアジア市場が最大の輸出先となったと発表した。アジア向け輸出は前年より67%増加し、日量31億立方フィート(シェア46.7%)となった(添付資料表参照)。

米国のLNGの輸出量は、2016年には日量5億立方フィート程度だったが、輸出基地の相次ぐ建設などにより、2020年には日量65億立方フィートを超えるまでに拡大した。2020年は「新型コロナウイルス禍」による世界的なエネルギー需要減少や、米国メキシコ湾岸地域へのハリケーンの襲来で掘削施設が幾度も操業停止したことによる影響が懸念されていたが、輸出量の増加基調は維持された。

輸出先は2016年に20カ国・地域だったが、欧州諸国や台湾などが加わり、2020年には38カ国・地域まで増加した。2019年には、欧州が全輸出量の4割を占める主要市場だったが、2020年にはアジアが最大の輸出先となった。アジアの中でも、中国向けが前年比30倍の日量6億立方フィート(シェア9%)に急増し、アジア向け輸出拡大に寄与した。中国は2017年まで、韓国や日本などと並び、米国産LNGの主要輸出先だった。しかし、2018年以降、米中通商摩擦が激化すると、中国による米国産LNGに対する追加関税が25%に上昇し、2019年には中国向け輸出は前年比9割以上減少した。その後、2019年12月に、中国が米国からの輸入を2年間で2,000億ドル増やすことを規定した第1段階の経済・貿易協定が合意された(2020年1月に署名、2020年1月17日記事参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これを受け、中国政府が輸入者に対する追加関税の適用除外措置を開始し、中国向けLNG輸出が回復した。

世界有数のLNG消費地である韓国および日本向けは、それぞれ13.2%、12.1%のシェアを占め、2020年も中国を上回る主要輸出先となっている。

2025年には米国が世界最大のLNG輸出国と予測

米国は、カタール、オーストラリアに次ぐ世界3位のLNG輸出国となっている(2019年時点)。国際エネルギー機関(IEA)は、2020年6月に発表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米国の輸出量が今後も伸び続け、2025年には米国が世界最大のLNG輸出国となるシナリオを示している。同報告書では、2023年に中国が日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となることも示されており、世界のLNG貿易に与える米中両国の影響が、今後ますます大きくなることが見込まれる。

(上村真)

(米国)

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