アルゼンチン、リマグループから脱退

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年03月30日

アルゼンチン外務省は3月24日、ベネズエラの民主化への支援を目的に米州16カ国により構成された「リマグループ」から脱退すると発表した。アルゼンチンは、地域の安定へのコミットメントを継続し、各国の主権と内政を尊重する平和的かつ民主的な解決策を「独自に模索する」としている。

リマグループは、2017年8月8日にペルーの首都リマにおいてアルゼンチンを含む米州12カ国の代表が、平和的な手段を通じたベネズエラの民主主義の再構築を目的に掲げて行った「リマ宣言」により生まれ、その後4カ国が加わった。当時のアルゼンチンは中道右派のマウリシオ・マクリ政権だったが、2019年12月に発足したアルベルト・フェルナンデス政権はベネズエラとイデオロギーを共有する左派政権だ。

アルゼンチン外務省は、「リマグループの行動はベネズエラやその代表者を孤立させるだけで、何の結果にも結び付いていない」「ベネズエラの反体制派をリマグループに参加させたことは、アルゼンチンが受け入れがたい(リマグループの)姿勢につながっている」と、脱退の理由を挙げた。その上で、「ベネズエラの国民を救う最善の方法は、特定の勢力に肩入れしない包括的な対話、国際的な監視の下で過半数の支持を得られる選挙の実施だ」と指摘し、「ベネズエラ政府の下で全ての反体制派を交えて対話を行うべきだ」とした。また、ベネズエラに対する経済制裁やベネズエラを不安定化させる試みは、新型コロナウイルス感染拡大により苦しむベネズエラの人々の「人権享受を妨げている」と批判した。

アルゼンチン国内では、米国ワシントンD.C.でマルティン・グスマン経済相がIMFと交渉をしている最中に、IMFに対して影響力を持つ米国にとって友好的ではない決定を発表したことによる、IMFとの債務再編交渉への影響を懸念する声が上がっている。これに対して、3月24日付の現地紙「ラ・ナシオン」(電子版)は、「アルゼンチンには人権侵害をゆるさないという譲れない一線があることや、ニコラス・マドゥロ大統領を選挙プロセスから排除することにアルゼンチンが同意しないことを米国は知っており、アルゼンチンの姿勢は何ら変わっていないことから影響はない」との外務省関係者のコメントを伝えている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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