第3の電気通信事業者ディトが電話サービスを開始、通信環境改善に期待大

(フィリピン)

マニラ発

2021年03月17日

フィリピンで第3の電気通信事業者となるディト・テレコミュニティー(以下、「ディト」)は3月8日、セブ都市圏・ダバオ都市圏の一部のエリアにおいて電話サービスを開始した(政府通信社3月8日)。同社は、ダバオ市出身の実業家デニス・ウイ氏が率いるウデンナ・コーポレーションとその子会社チェルシー・ロジスティックス、および中国政府が所有している中国電信(チャイナテレコム)の合弁企業だ。ディトは、数週間以内に、マニラ首都圏などの他地域においてサービスを開始する意向も示している(「インクワイヤラー」紙3月9日)。

ディトは、対象エリアで4Gおよび5G(第5世代移動通信システム)のSIMカードを提供していく。R.G.マナバットの調査によると、同社4Gの回線速度の最小値平均は85.9Mbps、5Gは507Mbpsで、人口カバー率(注)は37.48%だった(国営通信2月23日)。同社は電気通信市場において30%のシェア獲得を目指しており、市場シェアを拡大していくために人口カバー率を数年で84%以上まで高めることを目指している(「ビジネスワールド」紙3月9日)。

フィリピンでは、長らく大手通信事業者のグローブとPLDTの2社による寡占状態が続いていた。世界銀行が2020年10月に発表した「フィリピン・デジタル・エコノミー・レポート 2020」によると、フィリピンの通信速度は遅く、ベトナムやラオスなどのASEAN諸国に劣後している。また、通信価格が高いなどの課題がある。フィリピン競争委員会(PCC)は2021年3月8日、ディトの参入が事業者間での競争を活性させるとコメントした。市場競争が加速することで、通信サービスの質の向上と、サービス価格を下落させる狙いがある。

また、新型コロナウイルス感染拡大以降、企業の在宅勤務が進む中で、通信サービスの改善が求められてきた。特に、近年、同国が外貨獲得源としてきたIT-BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)産業では、通信環境が労働生産性に大きな影響を与えている。ジェトロのヒアリングに対して、大手IT-BPM企業は「ディトの参入によって通信環境の改善を期待する」と発言した(2021年3月1日にヒアリング実施)。

(注)通信サービスの提供が可能な範囲を示す指標。100%に近づくほど、より多くの人口が通信サービスにアクセスできる。

(吉田暁彦)

(フィリピン)

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