エルドアン大統領、新経済改革パッケージを発表

(トルコ)

イスタンブール発

2021年03月23日

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は3月12日、2021年を新型コロナウイルス禍を克服し、中期的な質の高い経済成長期に入る年にすると位置付けるため、投資や生産、雇用、輸出促進など多くの分野に関わる新しい「経済改革パッケージ」を発表した(トルコ国営アナドル通信3月12日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

新経済改革PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、マクロ経済政策と構造政策からなる。焦点を当てているのは、マクロ経済政策面では財政規律改善やインフレ抑制、金融セクター強化、経常赤字削減、雇用増大、構造政策面では制度的構造改革や投資促進、国内商業活動の円滑化、競争力の強化、市場監視と管理によるインフレの抑制だ。フアト・オクタイ副大統領傘下の「経済調整評議会」と、リュトフィ・エルバン国庫・財務相傘下の「金融安定委員会」が構造改革を監視・管理する。

エルドアン大統領は、この改革では財政規律の改善が最優先事項として、債務の削減、行政の無駄な支出の削減、通貨リラでの借り入れ促進を掲げた。また、デジタル化を通じた納税手続きの簡便化や、低所得の小規模ビジネス従事者(約85万人)に対する免税、官民パートナーシップ(PPP)の強化に言及した。

特に、懸案のインフレ抑制を優先課題の1つに挙げ、「食品物価委員会」が市場管理を効果的に行うとした。経常赤字問題に関しては、エネルギー資源や生産の輸入依存を引き下げるとした。

産業界のグリーン改革支援では、グリーンボンド(環境債)の発行によって、再生可能エネルギー、二酸化炭素排出量を削減する電気自動車やハイブリッド車など、環境に優しい投資の資金調達の機会を多様化させるという。

産業面では、ヘルスケア産業とデジタル技術の重要性を強調した。具体的には、医薬品、ワクチン、医療機器などの戦略的物資の開発と生産を担当するヘルスケア産業局を大統領府に設置するとした。また、ソフトウエア技術の発展については、大統領府ソフトウエア・ハードウエア産業局を設置し、世界的な競争力を獲得し、若者の雇用を促進するとした。

トルコの現地紙は、経済を強化するための安定性や予測可能性、透明性をもたらす改革として、この改革を評価するアナリストやビジネス界の見解を報じている。一方で、インフレ抑制や物価の安定について、「価格安定委員会」と中央銀行との役割分担などについて言及がなかったことから、経済改革といえるほどの実効性があるか疑問とする声も見受けられた。

(中島敏博)

(トルコ)

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