持続可能な経済活動のタクソノミー基準整備へ検討続く

(EU)

ブリュッセル発

2021年03月23日

欧州委員会の諮問機関である「持続可能な資金提供プラットフォーム(Platform on Sustainable Finance)」は3月19日、持続可能な経済活動のEU独自基準であるタクソノミーに関する報告書を取りまとめ、公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同機関は、2020年7月に施行されたタクソノミー規則(2020年6月30日記事参照)の下で設置された専門家機関で、欧州環境庁や欧州投資銀行の代表者などで構成される。報告書では、EUが掲げる2050年の気候中立に向けた移行に焦点を当て、企業や投資家が投資決定を行う上でどのような情報が必要か分析している。現在、欧州委員会はタクソノミー規則が示した持続可能な経済活動の類型を具体化する委任規則(通称グリーン・リスト)の採択準備を進めており、報告書はその検討材料や今後の同規則の運用の指針となるものだ。

報告書の見解は欧州委が準備進めるグリーン・リストに反映

報告書は、欧州委からの質問事項に回答する形式で、タクソノミー規則をはじめとする現在の持続可能な投資基準の枠組みで見直すべき点や、「持続可能性」や「環境への著しい害」など基本となる用語の定義、規則の環境目標の達成に実質的には貢献しないものの、利用可能な最善の手段として短期的には必要な移行的活動の取り扱いなどを整理している。例えば規則では、投資対象となるプロジェクトや金融商品に対し情報の報告義務を課しているが、報告書では、同義務が気候中立に向けた移行への貢献内容を理解するための手段となるように要件を整えることを提言している。用語の定義に関しては、定義の曖昧さがグリーンウォッシング(実質を伴わない環境訴求)という負の概念を生み出したと指摘し、規則のほか、欧州委が準備を進めるグリーンボンド(環境改善の促進事業を使途とする資金を調達するために発行する債券)の基準など、これまでのEUの文書で用いられた概念の共通点と相違点を検証している。今後の検討課題としては、どのような経済活動が規則に掲げた環境目的への効果がない、もしくは小さいと言えるか、また、環境に著しい害を及ぼす経済活動は何か、といった論点を挙げ、2021年5月に第1段階としての勧告、さらに同9月に最終報告書を取りまとめる計画を示した。

規則が示す6類型のうち、気候変動の緩和、気候変動への適応の2点については、既に2020年11月に委任規則の草案が公表され、公開諮問(パブリックコンサルテーション)では4万6,590件に上る意見が寄せられている。欧州委は、4月下旬の同委任規則採択を予定している。他の4類型については2021年中の採択、2022年中の適用開始を目指すとしている。

(安田啓)

(EU)

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