2020年の新生児は14.9%減、全人代で産児制限撤廃に関する議論も

(中国)

北京発

2021年03月02日

中国公安部の2月8日の発表によると、2020年に生まれ、かつ同年内に戸籍登録を行った新生児は1,003万5,000人となり、2019年の1,179万人から14.9%減となった。

中国では、一人っ子政策の影響により急速に進んだ人口の高齢化に対応するため、2014年1月から「単独二人っ子政策(注1)」を実施して段階的に産児制限を緩和、2016年1月からは全ての夫婦が2人目の出産を認めるようになった(二人っ子政策)。国家統計局によれば、二人っ子政策を開始した2016年には出生率(注2)が上昇したものの、その後は減少傾向が続いており、2019年には過去最低の1.048%となった(添付資料図参照)。

東北3省で出生率が低迷、全人代では産児制限撤廃に関する議論も

省・直轄市・自治区別にみると、東北3省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)の2019年の出生率は、それぞれ0.645%、0.605%、0.573%で、31の省・直轄市・自治区の中で最低水準だった。東北3省の常住人口をみると、黒龍江省は2014年、遼寧省は2015年、吉林省は2016年から人口が減少しており、2013年から2019年末までの累計では3省の合計で182万5,500人減少した(「鳳凰網」2月21日)。

2020年5月に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、東北地域で先行して産児制限を全面的に撤廃するよう求める建議が出された。国家衛生健康委員会は2021年2月18日、建議の内容が委員会の取り組みを参考に、現地の経済成長、社会の安定、資源・環境戦略、基本公共サービスへの影響や政策変更による社会リスクなどを研究・評価した上で、東北地域において出産政策を全面的に実施する試行方案について検討すると回答していた(注3)。

中国人口学学会副会長を務める、北京大学社会学部の陸傑華教授は、国家衛生健康委員会の回答は重要なシグナルで、全国規模でも産児制限撤廃をできるだけ早く進めるべきだと指摘した。産児制限の撤廃によって出生率の上昇効果が期待できない場合、出産手当の支給、税の減免などの政策が必要ともコメントした。

2020年11月に公表された「第14次五カ年規画(2021~2025年)および2035年までの長期目標の制定に関する建議」では、出産政策を改善し、長期的な人口動態のバランスを確保する方針が示された。同建議は2021年3月5日から開催予定の全人代で審議されることになっており、産児制限に関する今後の政策動向が注目される。

(注1)「単独二人っ子政策」とは、夫婦のどちらか一方が一人っ子である場合には2人目の出産を認めるという政策で、2014年1月から各省・自治区・直轄市で順次実施された。なお、夫婦が2人とも一人っ子の場合、2人目の出産を認める政策(「双独二人っ子政策」)は2002年から開始されている。

(注2)国家統計局が発表する出生率(粗出生率)は、一定期間内(通常は1年間)の一定の地域において、生まれた人数と平均人数の比を千分率で表示したもの。本稿では便宜上、千分率を百分率に換算して表示している。

(注3)国家衛生健康委員会は2月20日付で建議への回答に関する説明を公表し、「東北地域が試行的に産児制限撤廃をする」「出産政策が全面的に開放される」などのインターネット上の推測は「回答の本意ではない」と説明している。

(張敏)

(中国)

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