2020年のGDP、債務危機以来の大幅なマイナス成長
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2021年03月26日
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は3月23日、アルゼンチンの2020年第4四半期(10~12月)の実質GDPを発表した。前年同期比4.3%減、前期比(季節調整済み)4.5%増となった(添付資料表参照)。通年では前年比9.9%減と2001年から2002年にかけての債務危機以来の大幅なマイナスとなった。第4四半期に入って経済は上向いたが、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準には遠く及ばない状況だ。
第4四半期の実質GDP成長率を産業分野別に前年同期比でみると、16分野のうち製造業、電気・ガス・水道、建設業、商業(大手・零細)・修理、金融仲介サービスの5分野がプラスとなった。通年では、電気・ガス・水道、金融仲介サービスの2分野が前年比でプラスだった。GDP成長率全体を通年で大きく押し下げたのは、輸送・倉庫・通信、映画館や劇場、スポーツの興行などを含むその他社会・個人・向け・共同体サービスの2つだ。新型コロナウイルス感染拡大により人の往来が制限されたことや、映画館や劇場の閉鎖、無観客による興行などが響いた。
第4四半期の実質GDP成長率を需要項目別に前年同期比でみると、総固定資本形成を除く項目がマイナスとなった。通年では全ての項目が前年比でマイナスだった。GDP成長率全体を通年で大きく押し下げたのは個人消費と輸出だ。一方、輸入の大幅な減少はGDPの押し上げ要因となった。輸入が大幅に減少した要因としては、国内経済活動の停滞に加え、外貨不足を背景に政府は厳しい資本取引規制を導入しており、輸入代金決済用外貨の取得が困難になったことが挙げられる。
3月23日付の現地紙「ラ・ナシオン」電子版によると、2021年の実質成長率の見通しは割れている。政府が2021年度国家予算案で示した見通しは5.5%、下院のセルヒオ・マッサ議長が3月に示した見通しは7.0%、IMFが今年1月に公表した見通しは4.5%、中銀が集計する国内外エコノミストの2月末時点の見通しは6.2%となっている。政府は否定しているが、新型コロナワクチンの入手難、変異株による感染拡大により、厳しい行動制限を再導入する可能性があること、10月の中間選挙に向けて与党内で公共料金を中心とした経済政策をめぐる綱引きが行われていること、資本取引規制による原材料の輸入困難、価格統制の強化などが2021年の経済の見通しを不透明にしている。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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