バイデン米大統領、寒波被災のヒューストン訪問、超党派の連携訴え

(米国)

ヒューストン発

2021年03月02日

ジョー・バイデン米国大統領は2月26日、寒波被害にあった(2021年2月22日記事参照)テキサス州ヒューストン市を、ジル夫人とともに訪問した。1月の大統領就任後、被災地視察は初めて。バイデン大統領は、市内の新型コロナウイルスワクチン大規模接種会場での演説で、テキサスを襲ったような危機に直面した時、傷ついているのは共和党か民主党かは関係なく全員だとし、「助けが必要な人を支援するのがわれわれの仕事」「われわれはパートナーとして寒波や新型コロナウイルスからのテキサス州の回復、再建を支援していく」と表明した。

テキサス州では人口約2,900万のうち依然100万人が飲料水を確保できていない。ヒューストン市のシルベスター・ターナー市長は、水道管の破裂など被害の多くは外見では分からない点に触れ、「いまだ各住宅内での復旧が必要な状態だ」と述べている(「ロサンゼルスタイムズ」紙電子版2月26日)。州内9割の電力系統運用を行う機関「アーコット(ERCOT)」によると、今回の停電ピーク時には州内の発電所の48.6%が停止し、最悪の場合に数週間続くおそれのあった完全停電まで、残り4分37秒まで追い込まれていたことも明らかになっている。

大統領の視察には、グレッグ・アボット知事(共和党)、ジョン・コーニン連邦上院議員(共和党)も同行した(注)。バイデン大統領は訪問先のハリス郡危機管理センターで、知事から寒波の連絡を受けた際、「知事には必要なことは全て支援すると約束した。知事が質問をする前からイエスと答えた」とアボット知事の肩をたたきながら語り、知事も「そのとおり」と持ち上げ、場が笑いに包まれた。

アボット知事は、バイデン政権とは環境政策をめぐり意見が対立している。1月28日には、政権によるパリ協定への復帰やトランプ前政権が出した原油パイプラインの建設許可取り消しなど(2021年1月21日記事参照)を、エネルギー産業の雇用を奪うものとし、州政府機関にエネルギー産業を脅かす連邦の措置に法的手段を尽くすよう、命じている。しかし、バイデン大統領が訪問したこの日は、超党派での連携の重要性を強調する1日となった。

一方、地元では、今回の大停電の原因究明や今後の対策に関する論議が高まっている(2021年3月2日記事参照)。

写真 ヒューストン市内のアパートでは水道復旧後も緑色や異臭のする水が出ていた(ジェトロ撮影)

ヒューストン市内のアパートでは水道復旧後も緑色や異臭のする水が出ていた(ジェトロ撮影)

(注)寒波襲来時にメキシコ・カンクンに旅行し、批判を受けていたテッド・クルーズ上院議員(共和党)は、フロリダ州で開催中の保守派の会合「保守政治活動会議(CPAC)」で演説しており、不在だった。

(桜内政大)

(米国)

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