シンガポールを拠点とした製造業の拠点多元化支援で新イニシアチブ

(シンガポール)

シンガポール発

2021年02月05日

シンガポールのチャン・チュンシン貿易産業相は2月3日、生産拠点を多元化する製造会社を支援する官民の新イニシアチブ「東南アジア製造業同盟(SMA)」の発足を発表した。貿易産業省傘下の企業誘致機関である経済開発庁(EDB)や、海外進出や中小企業の支援機関のエンタープライズ・シンガポール(ESG)と、インドネシアやベトナム、マレーシアなどの工業団地運営会社が連携して、シンガポールを拠点に周辺国で生産活動を拡大する製造会社を支援する。

EDBとESGは同日、SMAに基づく戦略パートナーとして、東南アジア最大級の不動産開発会社キャピタランドと協力協定に署名した。また、EDBとESGは同様に、工業団地運営会社のセムコープ・デベロップメント、ギャラント・ベンチャーと、覚書(MOU)を結んだ。キャピタランドは、シンガポールと国境を接するマレーシア南部ジョホール州で工業団地「ヌサジャヤ・テック・パーク(NTP)」を運営する。また、セムコープとギャラントはインドネシアやベトナムなどで工業団地を運営しており、キャピタランドを含め3社が運営する工業団地は15カ所に上る。

SMAに基づく支援は、例えばシンガポールとNTPの両方に投資する製造事業者に対して、物流優遇価格の適用、サプライヤーのマッチング、シンガポールでのイノベーション活動のサポートなどがある。また、同イニシアチブは、製造業の生産多角化を促進するだけでなく、シンガポールを拠点とする中小企業が周辺国の工業団地の入居企業と取引する支援も行う。EDBとESGは、キャピタランドやセムコープ、ギャラントのほかにも、SMAの戦略パートナーを募集している。

チャン貿易産業相はSMAのイニシアチブについて、内外の企業がシンガポールの資金、人材やネットワーク力を活用して、周辺国に事業を拡大する「シンガポール・プラスワン戦略」を後押しするものだ、と説明した。同貿易産業相は1月25日に、2030年までGDPに占める製造業の割合約20%を引き続き維持するとともに、シンガポールを先端製造分野のイノベーションや人材のハブとする目標を明らかにしていた。同貿易産業相は、今回発表したSMAが、同目標を達成する上で重要なイニシアチブの1つになると述べた。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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