税収確保を目的に、牛肉輸出の予防的参照価格を設定

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年02月02日

アルゼンチンで1月27日、牛肉の輸出に関する予防的参照価格を定めた1月26日付税関総局一般決議4914/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが公布された。予防的参照価格制度は、過少に輸出額が申告されることを防ぎ、正しく税収を確保することを目的に、政府が製品の基準価格を設定する制度。輸出申告額が、当該予防的参照価格を下回る場合、上回る場合、ともに輸出書類と貨物の検査が行われる。

輸出の予防的参照価格は2009年に導入された制度で、マウリシオ・マクリ前政権下の2017年に廃止されていたものの、2020年5月、5月8日付税関総局一般決議4710/2020号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、現アルベルト・フェルナンデス政権下で再び導入された。これまでに、クランベリー、粉乳なども対象となっている。

今回対象となったのは、中国、日本、香港、タイ、韓国、北朝鮮、フィリピン、台湾向けに輸出される骨付き、骨付きでない冷凍牛肉だ〔メルコスール共通関税番号(NCM)では0202.20.90、0202.30.00〕。1キロ当たり(FOB)1.4~4.4ドルの範囲で予防的参照価格が設定されている。詳細は、一般決議の付属書Iに定められている。なお、アルゼンチン産牛肉の輸出額の7割以上が中国向けだ。

1月27日付の現地紙「クラリン」(電子版)によれば、国内事業者の中には、輸出額を過少に申告しながら、海外の取引先には実際の価格の差額を海外の口座に振り込ませ、その後、「優良スワップ」と呼ばれる取引を通じて、海外口座の外貨をペソに両替する取引が頻繁に行われており、政府はこれを問題視している。

輸出者は通常、海外から受け取る代金を外貨のまま保有することはできず、公定レートでペソに両替しなければならない。ただ、公定レート(1月28日時点で1ドル=93ペソ)と、市中で使われている並行レート(通称ブルーレート、1ドル=154ペソ)は乖離幅が大きく、輸出者が輸出控えをする要因の1つとなっている。さらに、優良スワップ取引に適用されるレート(CCLレート)は1ドル=151ペソと並行レートに近いことから、優良スワップ取引を通じて輸出代金を両替する事業者が存在したとしている。

政府が問題視する取引について、クラリン紙は、「外貨収入を減少させただけでなく、牛肉の国内価格にも影響を及ぼした可能性がある」と報じている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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