バイデン米大統領、ミャンマー制裁の大統領令署名、国軍関係10人と企業3社対象
(米国、ミャンマー)
ニューヨーク発
2021年02月12日
ジョー・バイデン米国大統領は2月11日、ミャンマー国軍による権力掌握を受けて、同国への制裁に関する大統領令に署名した。それに基づいて財務省は同日、制裁対象として、10人の軍関係者と3社の企業を指定した。バイデン大統領は1日に、事態の進展次第では制裁を検討すると示唆しており(2021年2月2日記事参照)、米議会幹部や同盟・友好国との相談を踏まえて制裁発動の判断に至ったとしている。
バイデン大統領は前日10日の記者会見で「ミャンマー国軍に対して再び、アウンサンスーチー氏とウィンミン大統領を含めて、拘束した民主的な政治指導者・活動家たちを解放するよう求める。軍は直ちに強奪した権力を放棄し、ミャンマーの人々が(2020年)11月8日の選挙で示した意思を尊重しなければならない」と、民主主義体制に戻るよう呼びかけた。
大統領令によると制裁措置の大枠は、クーデターに関与したとして財務長官が指定する者(注1)に対して、(1)在米資産の凍結、(2)資金・物品・サービスの取引の禁止、(3)米国への入国停止を科すこととなっている。バイデン大統領によると、(1)の対象となる資産は約10億ドルに上る。また、(1)と(2)は、これまでに締結された契約や米政府から与えられた許可にかかわらず適用されるが、今後、米国の法令などで例外措置とされるものには適用されない。大統領令では、制裁措置の迂回行為などがないよう、対象の指定については事前通知を行わない。すなわち、発表に伴い即時有効にするとしている。
バイデン大統領は10日に「今週中に第1弾の制裁対象を指定する」と述べ、財務省は翌11日に制裁対象を意味する特別指定国民(SDN)に加える人物と企業を発表した。既に人権侵害を理由にSDNに掲載していたミンアウンライン国軍総司令官とソーウィン副司令官の2人に加えて、国軍関係者8人の計10人が指定された。企業では、国軍と関わりがあるとして、ミャンマー・ルビー・エンタープライズ(Myanmar Ruby Enterprise)、ミャンマー・インペリアル・ジェイド(Myanmar Imperial Jade)、キャンクリ(Cancri)の3社を指定した(注2)。
商務省はこのほか、輸出・再輸出する際に許可が必要としている米国製品(物品・ソフトウエア・技術、注3)をミャンマー政府・省庁に仕向ける場合は、「原則不許可」の扱いにすると発表した。また、ホワイトハウスが発表した制裁に関するファクトシートでは、国際開発庁(USAID)によるミャンマー政府向けの助成金を同国の市民団体など向けに振り替えるとしている。
バイデン大統領は「さらなる措置を課す準備もある。国際的なパートナーと協力し、他の国にもこの取り組みに参加するよう求めていく」と、事態が改善しない場合は追加の制裁手段を講じることも示唆している。
(注1)個人だけでなく、中央銀行を含むミャンマーの政府機関、事業体も含まれ得る。また、指定された者の配偶者と成人の子も制裁対象となる。詳細は大統領令第1条(a)を参照。
(注2)指定されたSDNの詳細については、財務省の発表内容を参照。
(注3)現時点の発表内容では明示されていないが、商務省が管理する規制品目リスト(CCL)に掲載されている製品が対象になると見られる。
(磯部真一)
(米国、ミャンマー)
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