バイデン米大統領、ミャンマー向け制裁の検討を示唆

(米国、ミャンマー)

ニューヨーク発

2021年02月02日

ジョー・バイデン米国大統領は2月1日、ミャンマー国軍による国家権力の掌握(2021年2月1日記事参照)について、懸念を表明するとともに、制裁の検討を示唆する発言を行った。具体的な内容は現時点で不明だが、米国連邦議会も対応の必要性を訴えており、進展次第で、過去に解除した輸入制限などの経済制裁が復活する可能性が浮上している。

バイデン大統領は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、ミャンマー国軍の権力掌握を「民主化と法の統治に対する直接的な暴力」と非難した。大統領は、国軍の権力放棄に向けて、国際社会の取り組みの必要性を強調し、協力できる国と連携していくと述べた。また、2016年の制裁解除(2016年10月12日記事参照)(注1)に触れ、必要に応じて制裁を再度検討する旨を表明している。

ジェン・サキ報道官によると、バイデン大統領には、ジェイク・サリバン補佐官(国家安全保障担当)が状況説明を行っている。大統領の声明に先立つ1月31日には、アントニー・ブリンケン国務長官が、ミャンマー国軍がアウンサンスーチー国家最高顧問など政府・民間の指導者を拘束したとの報告に対する懸念を表明し、拘束した人々の解放やミャンマーの2020年11月の選挙結果の尊重などを求める声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

米連邦議会のボブ・メネンデス次期上院外交委員長(民主党、ニュージャージー州)は、ミャンマー国軍が権力放棄を行わない場合の制裁発動を支持する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、迅速な行動に向けて大統領や上院指導部と連携する意向を示した。ミッチ・マコーネル上院少数党院内総務(共和党、ケンタッキー州)は、今回の出来事を「絶対的に許容できない」とし、バイデン政権に強い姿勢を求めている。

米国がミャンマーに課してきた経済制裁については、輸入の全面的な停止のほか、特定企業からの輸入の禁止や、ヒスイおよびルビーの輸入禁止、新規投資または金融サービスの禁止を含む(注2)。オバマ政権期に駐ミャンマー米国大使を務めたデレク・ミッチェル氏(現・全米民主国際研究所所長)は、制裁をめぐり、米国が同盟国の支持を得られるかは不透明とする一方、「国(ミャンマー)が絶望的な現状では、国民に損害を与えないことが重要」と指摘している(「ワシントン・ポスト」紙電子版2月1日)。

(注1)米国は2017年以降、ミャンマー国軍による同国北部のイスラム教徒ロヒンギャへの人権侵害があったとして、国軍関係者の一部への制裁を発動している。

(注2)輸入禁止については、「2003年ビルマ自由・民主化法」に基づく全面的な禁止(2003年7月~2013年7月)と、部分的な禁止(ヒスイおよびルビーは2008年7月~2016年10月)は、発動時期がそれぞれ異なる。

(藪恭兵)

(米国、ミャンマー)

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