2020年に政府債務残高は急増、依然として持続可能な水準との見解も

(フィリピン)

マニラ発

2021年02月09日

フィリピン財務省財務局は2月2日、12月末時点での政府債務残高が9兆7,950億1,000万ペソ(約21兆5,490億2,200万円、1ペソ=約2.2円)だったと発表した。2019年12月末時点の債務残高より26.7%の増加となる。対GDP比での政府債務残高は54.5%で、2019年12月末時点の39.6%から急上昇した。新型コロナウイルス感染拡大に対応するため、政府が資金調達を増やしたことに加え、GDP成長率が通年でマイナス9.5%と大きく低下したため、対GDP比での残高が一気に増加した。

2020年12月末時点での政府債務残高のうち、6兆6,946億9,000万ペソが国内からの借り入れ(2019年12月末より30.6%増加)、3兆1,003億2,000万ペソが海外からの借り入れ(同19.1%増加)となった。国内からの借り入れでは、大部分を占める国債が2019年12月末より30.6%増加した。国債の金利は2020年を通じて低下傾向にあり、政府の資金調達コストを下げている。例えば、364日モノの財務省短期証券の金利は、2020年1月には3.860%だったが、2021年2月3日時点では1.492%まで低下している。海外からの借り入れについては、国際機関からの借り入れが34.9%、ドル建て国債が11.0%増加した。一方で、円建て国債はマイナス29.1%となった。

フィリピンは2010年代を通じて堅実な財政運営を行い、対GDP比での政府債務残高の増加を抑制してきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた2020年まで、対GDP比での政府債務残高は50%を下回っていた。2020年に政府債務残高は急上昇して対GDP比5割を超えたが、12月末時点の54.5%という数字は、依然として、国際的に閾値(いきち)として設定される60%を下回っている。RCBC銀行のマイケル・リカフォート・チーフエコノミストは、現在の政府債務残高の水準に照らして、政府にはさらなる財政拡大や債務負担を行う余地が残されているとコメントした(2021年2月2日付政府通信社)。

(吉田暁彦)

(フィリピン)

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