米ヒューストンで、気候変動テック支援施設の建設進む

(米国)

ヒューストン発

2021年02月08日

北米最大級の気候変動関連テック・インキュベーター「グリーンタウンラボ」(米国マサチューセッツ州サマービル)は2月2日、2021年春にヒューストン市内に開設予定のスタートアップ・インキュベーション施設「グリーンタウンヒューストン」の起工式を行った。本施設は、ヒューストン市中心部にあり、地元ライス大学の支援を受けて建設中の大型インキュベーション施設「アイオン(The Ion)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注1)に隣接する。

グリーンタウンヒューストンの設置は、2020年6月に発表された。グリーンタウンラボはヒューストンを選んだ理由として、世界有数のエネルギー関連企業などが集積し、工学に強みを持ち、有能な人材が集まっており、これらを未来の脱炭素化に向けて結集できる点を挙げている。創設パートナーには、石油大手シェブロンやシェル、電力大手NRGエナジー、ヒューストン本拠の家庭用太陽光発電・蓄電サービス企業サンノバ・エナジーなど16社が参画しており、施設内には最終的にスタートアップ企業など50社が入居する予定だ。

式典に出席した、シルベスター・ターナー市長は「ヒューストン市の気候変動対策計画(Houston Climate Action Plan)を実現し、市が世界のエネルギー・トランジションの牽引役になる上で、次世代のエネルギー企業を誘致し、育てることは極めて重要だ」とあいさつした。

ヒューストン市が2020年4月に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした気候変動対策計画では、温室効果ガスの排出削減、2050年までのカーボン・ニュートラル実現、世界的なエネルギー・トランジションの主導をうたっている。また、同計画の下、2025年までにヒューストン広域経済圏で再生可能エネルギーやカーボンキャプチャー技術など、エネルギー分野の革新技術企業(エネルギー2.0)を50社誘致・創出することを目標にしている(注2)。

「世界のエネルギー首都(Energy Capital)」とも呼ばれるヒューストンは、エネルギー関連企業が4,600社所在し、全米の石油ガス生産部門の雇用の3分の1を抱えている。同時に、ヒューストン市は気候変動対策に注力する世界97都市が参加する「C40」(注3)に加盟している。また、ターナー市長は、全米470以上の都市が参加する「気候変動市長会議」(Climate Mayors)の議長を務めるなど、市全体として気候変動対策への関心も高い。

(注1)広さは28万8,000平方フィート(東京ドームのグラウンド面積約2個分)で、2021年第1四半期に完成の予定。スタートアップのためのコワーキングスペースや、企業パートナーのオフィス、小売り施設などからなる。石油大手シェブロンは、入居契約を締結済み。

(注2)ジェトロは2020年12月、ターナー市長を迎え、エネルギー産業を含むヒューストン市のビジネスの魅力を紹介するオンラインセミナーを開催した。録画動画はこちら

(注3)米国から、ヒューストンのほか、オースティン、ボストン、シカゴ、ロサンゼルス、マイアミが参加している。

(桜内政大)

(米国)

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