自宅待機令下のカナダ・トロントで日本酒ウェビナー開催

(カナダ、日本)

トロント発

2021年02月22日

ジェトロは2月15日、カナダ・オンタリオ州日本酒協会(Sake Institute of Ontario:SIO)と共催で、「日本酒:旨味(うまみ)および食との対話」と題した、日本酒と食のペアリングに関するウェビナーを開催した。オンタリオ州酒類専売公社(LCBO)のジョージ・ソレアス社長兼最高経営責任者(CEO)をはじめ、非和食レストランオーナーやソムリエなどの業界関係者87人を含む合計160人が参加した。配達可能な地域への参加者へは、日本酒と食のペアリングセットが提供された。

オンタリオ州は、2020年末を挟んだ新型コロナウイルス感染者の急増を受け、非常事態宣言下の1月14日に自宅待機令(Stay-at-Home Order)を発令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、屋内集会を禁止した。その後、地域ごとに規制緩和の方針を発表したが、トロント市は早くとも2月21日まで規制は緩和されない見込みだ。ウェビナー開会あいさつでSIOのケン・バルバー会長は「コロナ禍でのイベント開催だが、明るい側面も1つはある。それは日本酒業界がイノベーションを学んだことだ」とコメントし、自宅でくつろぎながら試飲できる利便性やイベントで飲酒後に運転する必要がない安全性を引き合いに出し、従来の会場参集型とは異なる新しい形の試飲会であることを印象付けた。

ウェビナーでは、在トロント日本総領事館の佐々山拓也総領事による歓迎あいさつの後、SIOの教育担当ディレクターで、酒サムライ(注)のマイケル・トランブレイ氏による講演が行われた。同氏は、日本産酒類3種と比較用のカナダ産日本酒、日本産食材サポーター店のギンコー・ジャパニーズ・レストランおよびキ・モダン・ジャパニーズ+バーから提供された、5つの味覚(旨味、塩味、甘味、酸味、苦味)を代表するメニューとのペアリングを行いながら、旨味を持つ日本酒がワインに比べてより食事と合わせやすく、日本食に限らずあらゆる食事とのペアリングを楽しめることを解説した。

写真 各レストランから配送されたメニューや生ハムなど身近な食材を例に旨味について説明するマイケル・トランブレイ氏(ジェトロ撮影)

各レストランから配送されたメニューや生ハムなど身近な食材を例に旨味について説明するマイケル・トランブレイ氏(ジェトロ撮影)

写真 ウェビナーで提供された酒類セット(左から、奥の松酒造「とろリンゴ」、オンタリオ・スプリング・ウォーター・サケ・カンパニー「泉ゴールド純米吟醸」、出羽桜酒造「桜花吟醸酒」、月桂冠酒造「ブラック・アンド・ゴールド」)とキ・モダン・ジャパニーズ+バーによるフードペアリングセット(塩味:鶏のもろみ味噌焼、苦味:ラピーニの巻物、酸味:タコの酢の物黄身酢和え、旨味:ハマチのトマト味噌煮、甘味:チョコレートトリュフ)(ジェトロ撮影)

ウェビナーで提供された酒類セット(左から、奥の松酒造「とろリンゴ」、オンタリオ・スプリング・ウォーター・サケ・カンパニー「泉ゴールド純米吟醸」、出羽桜酒造「桜花吟醸酒」、月桂冠酒造「ブラック・アンド・ゴールド」)とキ・モダン・ジャパニーズ+バーによるフードペアリングセット(塩味:鶏のもろみ味噌焼、苦味:ラピーニの巻物、酸味:タコの酢の物黄身酢和え、旨味:ハマチのトマト味噌煮、甘味:チョコレートトリュフ)(ジェトロ撮影)

参加者からは40近い質問が寄せられるなど日本酒への関心の高さがうかがわれ、閉会挨拶を行ったジェトロ・トロント事務所の斎藤健史所長は「トランブレイ氏の講演により、日本酒の神秘性が取り除かれ、少しでも身近なものに感じていただければうれしい」と締めくくった。

ウェビナー後のアンケートでは、「レストラン再開が許可されたら、日本酒をメニューに加える」というシーフードレストランオーナーや、「ゲストへ日本酒を勧めるのに自信が持てるようになった」というフレンチレストランのソムリエ、「日本食のみならず他の食事に日本酒をどう合わせればよいかが分かった」というLCBO関係者の声も聞かれた。ジェトロでは2月22日にも、4種類の日本産酒類の使用銘柄を変えて、同規模のウェビナーを予定している。

(注)全国の若手蔵元から組織される日本酒造青年協議会が、日本酒文化を日本国内のみならず、広く世界に伝えていくために、日本酒を愛し育てるという志を同じくする人に与える称号。

(飯田洋子)

(カナダ、日本)

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