2020年の中国の対米輸出8.2%増、医療用品と巣ごもり需要関連が増加

(中国、米国)

中国北アジア課

2021年02月10日

2020年の中国の米国への輸出額はこのほどジェトロがグローバル・トレード・アトラスを基にまとめたところ、前年比8.2%増の4,520億57万ドルとなった。上半期は前年同期比11.1%減だったが、下半期に同25.8%増と急増し、通年ではプラスの伸びとなった(添付資料図参照)。米国は中国にとって引き続き最大の輸出先で、中国の輸出額に占める米国のシェアは、前年から0.7ポイント拡大して17.4%となった。

輸出品目の上位15品目(HSコード6桁ベース)をみると、9品目が追加関税措置の対象となっている(注)。上半期には前年同期比減だった品目も、通年では多くが増加に転じる中、データ受信・変換・送信・再生機械(以下、データ受信機械、前年比16.5%減)、機械部品・付属品(6.6%減)の減少傾向は変わらなかった。これらは、米国の輸入額に占める中国のシェアが急速に低下しており、2017年のシェアと比較して、データ受信機械は16.8ポイント減の31.3%、機械部品・付属品は7割から3割へと急減している。米国の輸入統計を見ると、データ受信機械はベトナムと台湾、機械部品はベトナムと韓国の伸びが大きく、中国からのシフトが進んでいる様子が見て取れる。

一方、増加となった品目の多くは、新型コロナウイルスへの対応に必要なマスクなど医療用品に加え、ノート型パソコン、一定額未満の小口貨物、ビデオゲーム用の機器、身体トレーニング用具、パソコンのモニターなど、ロックダウンによる巣ごもり需要関連品目の伸びが目立った。

追加関税措置の対象であっても、医療用品は多くが適用除外品目になっている。前年比約7倍と急増した紡織用繊維のその他の製品の中で、伸びを牽引したのはマスクで、N95や使い捨て、布製、あらゆる種類のマスクの輸入が伸びた。プラスチック製品では、試験管等を含む実験器具が2倍に増えた。

巣ごもり需要関連では、米国での在宅勤務の増加などにより、中国での生産活動が回復し始めた2020年4月以降はノート型パソコンの輸入が急増し、通年では18.8%増となった。ベトナムや台湾からの輸入も増加したが、ノート型パソコンの輸入全体が伸びたため、中国のシェアが9割を超える状況に変わりはない。また、越境ECを含むオンラインショッピングの利用増により、一定額未満の小口貨物は前年比約2倍の伸びとなった。

米国通商代表部(USTR)は12月に、新型コロナウイルス対策を目的とした医療関連製品の一部の製品に対し、12月31日までとしていた適用除外措置を2021年3月31日まで延長すると発表した(2021年1月4日記事参照)。今回発表した除外品目は医療関連製品に限っているため、USTRが別途、除外の延長や追加を発表しない限り、これまで適用除外を受けていたその他の製品の適用除外は12月31日をもって終了したままとなる。米国のサキ大統領報道官は1月29日、トランプ前政権が進めた中国との貿易合意を含めて「国家安全保障に関わる全ての政策を見直す」との考えを表明。適用除外措置が終了した製品への対応を含め、今後の動向が注目される。

(注)米国は、中国との第1段階の合意に基づき、2019年12月15日に発動予定だった対中追加関税リスト4Bの発動は見送った。

(江田真由美)

(中国、米国)

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