国家電力系統に関する新政策を発表、経済界は反発

(メキシコ)

メキシコ発

2020年05月18日

メキシコのエネルギー省は5月15日付の官報で公布した省令により、「国家電力系統(SEN)の信頼性・安全性・継続性・品質に関する政策」を発表した。2018年2月28日付官報で公示した政策を新しく作り変えたものだ。同省は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で電力需要が低下する中で発電能力が過剰になりつつある現状に鑑み、電力供給の信頼性と継続性を保証し、SENの秩序を確保するための是正措置の時機を得た特定を行って政策を考案したとしている(エネルギー省プレスリリース5月15日付)。

一方、日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は5月17日付プレスリリースで、5月15日付省令はメキシコのエネルギー分野における合法性や法的信頼性、自由競争の概念に対する明確な侵害行為だとして、内務省や行政府法務審議会に対し省令の即時撤回を求め、撤回されない場合は国内および国際的な枠組みの法的手段に訴えることを明らかにしている。経済界は今回の新政策発表について、手続き面と内容面の双方で問題視する。手続き面では、パブリックコメントを受け付けて規制内容の改善につなげるプロセスが省略されたことだ。通常では、国家規制改善委員会(CONAMER)のウェブサイト上に所管省庁による規制影響分析とともに草案が掲載され、20営業日程度パブリックコメントを受け付ける。しかし、今回は「政策発表であり、新たな規制の導入ではない」としてこのプロセス省略をCONAMERに申請し、ウェブサイトへの草案掲載からわずか数時間後に官報で省令を公布した。新政策の中には、発電事業者が新たな系統接続を申請した際の国家エネルギー管理センター(CENACE)の審査権限強化が含まれており、事業者にとっては規制コストが伴うため、規制影響分析やパブコメの省略は違法だと経済界は主張する。内容面の問題としては、風力や太陽光による新たな発電事業の妨げになる内容が含まれるとし、18の州で合計300億ドルを投じた発電事業が影響を受けるという。

政権内でも意見の相違、CONAMER長官が辞任

今回の新政策発表に先立ち、エネルギー省傘下のCENACEは、新たな風力や太陽光発電所のSENに接続した試運転を5月3日から禁止する細則を市場関係者に通知していた(2020年5月7日記事参照)。この細則に法的拘束力を持たせるため、エネルギー省は細則を官報公示する手続きを踏んでいたが、5月12日にCONAMERによって却下された。却下理由は、エネルギー省が細則の規制影響分析を作成していなかったからだ。同省は細則の官報公示を取り下げ、代わりに「政策」を作成して5月15日付官報で公布したが、その直前に前政権では同省の電力担当次官を務めていたセサール・エルナンデスCONAMER長官が辞任した。

(中畑貴雄)

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