2020年通年のGDP成長率はマイナス5.6%

(マレーシア)

クアラルンプール発

2021年02月24日

マレーシア中央銀行と統計局は2月11日、2020年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率を前年同期比マイナス3.4%と発表した。クアラルンプール首都圏を含む一部地域で、10月中旬から実施された条件付き移動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)が影響し、前期のマイナス2.6%からさらに減速した。

2020年第4四半期、移動制限による影響が成長を押し下げ

需要項目別にみると、特に個人消費と公共投資の落ち込みが内需を押し下げた。GDPの58.0%を占める個人消費は、新型コロナウイルス禍による所得と雇用状況の不安定化やCMCOによる外出制限で、前年同期比3.4%減と鈍化が続いた。公共投資は、連邦政府や政府機関による資本支出削減で19.8%減となり、13期連続で縮小した(添付資料表1、図参照)。

産業別では、前期と同様、製造業以外の産業がマイナス成長だった。製造業は、前年同期比3.0%増で、前期(3.3%増)からやや減速したが、プラス成長を維持した(添付資料表2参照)。特に半導体の世界需要増により、電気電子製品が好調だった。他方、農業は、労働力不足と悪天候による収穫活動への影響が続き、0.7%減だった。鉱業は、原油および天然ガスの生産施設のメンテナンスによる一時閉鎖のため生産量が減少し、10.6%減と振るわなかった。建設業は、建設現場でのコロナ感染拡大防止対策による一時閉鎖や労働力不足で、13.9%減と不調だった。サービス業は、4.9%減となった。小売りや食品・飲料などが移動制限の強化により低迷した一方で、金融、情報通信はプラス成長となり、業種により明暗が分かれた。

2020年通年、コロナ禍でアジア通貨危機以来最悪の成長率に

2020年通年の経済成長率はマイナス5.6%で、中央銀行の見通し(マイナス3.5%~マイナス5.5%)を下回り、1998年のアジア通貨危機以来、最悪となった。テンク・ザフルル・アジズ財務相は2021年の経済成長について、「2021年1月中旬から実施中の移動制限令(Movement Control Order:MCO)により、経済への打撃が予測されるが、2020年3月に実施したMCOに比べ、影響は軽微」と強調した。一方、格付け大手フィッチグループ傘下のフィッチソリューションズは2月15日、マレーシアの2021年通年のGDP成長率予測を10.0%から4.9%に大幅下方修正した(「ザ・スター」紙2月15日)。中銀による2021年の経済成長見通しは、3月中に発表される見込みになっている。

(エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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