欧州委、EU・中国包括的投資協定の条文公表

(EU、中国)

ブリュッセル発

2021年01月26日

欧州委員会は1月22日、中国との包括的投資協定(CAI)の条文テキストを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(添付資料表参照)。CAIは12月30日にEUと中国の間で原則合意に達していたが(2021年1月5日記事参照)、詳細は明らかになっていなかった。22日に公表されたのは前文と第一部から第六部までの計100の条文からなる協定本文、補助金の透明性や紛争解決手続きに関する一部の付属書。最終合意ではないため、条文に通し番号が付されていないなど、未完成の状態で公表している。投資自由化約束の内容やその他の付属書は2月に公表するとしている。

投資保護と投資紛争解決は別途、2年以内の合意目指す

CAI本文の中心となる規定は第二部から第五部で、投資の自由化(第二部)、規制枠組み(第三部)、投資と持続可能な開発(第四部)、紛争解決(第五部)についてそれぞれ規定する。第二部では、付属書(現時点で未公表)に規定した諸条件に従った上で、音響・映像サービスや航空輸送サービスなど列挙した分野を除き、企業の総数に対する制限や合弁企業要件など市場アクセスへの制限や、技術移転要求や輸出入要求などの特定措置の履行要求を課さないことなどを規定する。ただし、国家による財産収用など、国家と投資家および投資財産との関係を規定する投資保護の規定は網羅的に含んでいない。第三部では、投資の許認可手続きの一般原則や透明性の確保について規定するほか、金融サービスに対する規制について唯一分野別の規定を設けている。

第四部にはEUが重視する投資と環境、投資と労働、その他企業の社会的責任といった投資のサステナビリティー(持続可能性)について詳細に規定している。第四部に関して、両当事者間で見解の相違がある場合は、専門家によって構成するパネル(小委員会)を設置して論点の明確化を図る仕組みを特別に設けており、第五部の紛争解決規定の対象からは除外されている。

第五部の紛争解決規定は、当事者間つまりEUと中国の間でのCAIの解釈と適用に関する紛争への対処で、投資家と国家の紛争解決手続き(投資紛争解決)を規定したものではない。投資紛争解決および投資の保護については第六部で、本協定の署名から2年以内を目標に追加の交渉を完了させることを目指すと規定している。

(安田啓)

(EU、中国)

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