解雇や休職強要の禁止措置をさらに90日間延長、退職金割り増し義務は2021年末まで継続

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年01月27日

アルゼンチン政府は、1月23日に公布した必要緊急大統領令(DNU)39/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、従業員の「正当な理由なき解雇」および「休職の強要」を禁止する措置を延長した。期間は1月26日から4月25日の90日間。さらに、「正当な理由なく解雇」した従業員(本人が職場復帰を要求せず退職金の支払いを求めた場合)に対し、退職金(Indemnización)を割り増しして支払う義務を2021年12月31日まで継続する。

正当な理由なき解雇と休職の強要を禁止する措置は、新型コロナウイルス感染拡大が始まった2020年3月に導入されたもので、仕事量の減少や不可抗力を理由とした解雇を禁じるもの(2020年4月2日記事参照)。退職金の割り増し義務は、アルベルト・フェルナンデス政権発足直後の2019年12月に、2019年12月13日付政令34/2019号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公布した「労働に関する緊急事態宣言」により導入された。

また、今回のDNUによって、緊急事態宣言の適用期間を2021年12月31日まで延長した。政府は、新型コロナウイルス感染拡大による非常事態の中、「労働者の生活環境の悪化や職を失うことへの不安感を払拭(ふっしょく)するため」および「憲法に沿って労働者を守るため」と、今回の措置延長の理由を挙げている。

DNUの詳細は以下のとおり。

  • 仕事量の減少および不可抗力を理由とした「正当な理由なき解雇」を90日間(4月25日まで)禁じる。
  • 仕事量の減少および不可抗力を理由とした休職を90日間(4月25日まで)禁じる。
  • ただし、労働省へ申請を行い、休職期間中も手当を支払うことで雇用主と従業員間で合意した場合は休職を認める(労働契約法20,744号第223Bis条に基づく)。
  • 上記に反して解雇や休職措置が取られた場合は無効と見なし、労働関係は継続される。
  • 「正当な理由なき解雇」で従業員が職場復帰を要求せず退職金の支払いを求めた場合は、退職金を2倍支払うことを義務付ける。ただし、倍増分は50万ペソ(約60万円、1ペソ=約1.2円)を超えてはならない。(例:退職金を60万ペソとした場合、倍増分は50万ペソにとどまり、合計110万ペソが支払われる)
  • 2019年12月13日以降に雇用された従業員は本措置の対象外とする。

政府の発表を受け、アルゼンチン工業連盟(UIA)はアルベルト・フェルナンデス大統領に宛てた公開レターで、今回の延長措置は「産業における雇用の回復だけでなく、正規雇用全体の回復も妨げる」として強く抗議した(現地紙「ラ・ナシオン」電子版1月23日)。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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