中央銀行、一部の海外送金に係る手続き簡素化

(バングラデシュ)

ダッカ発

2021年01月25日

バングラデシュ中央銀行は1月4日、国内市場向けに製品を生産する企業(インダストリアル・エンタープライズ、注)とサービス業の企業が海外企業に対して研修費用やコンサルティング費用などを送金する際、確定申告時の所得額に当たる、送金者の前会計年度(原則として7月1日~翌年6月30日)の売り上げの1%相当額または10万ドルのいずれか高い方の金額を上限に、中央銀行による事前承認なしに送金を認める通達PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を市中銀行に発出した(添付資料表参照)。

国内市場向けの製品を生産する企業は従来、コンサルティング契約の締結先の海外企業に対し、前年度の年間売り上げの1%相当額を上限として、当該契約に基づく費用を中央銀行による事前承認なしに送金することが認められていた。2020年11月に発出された通達PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、サービス業の企業も対象となることが明記され、加えて、監査費用や認証取得費用、コミッション費用、検査費用、査定費用のような費目も契約に基づき送金可能となった(ロイヤルティー、技術指導料など管轄庁からの許認可が必要な費目は別途上限額が定められており、今回の改定の対象外)。また、同通達により、経済特区(EZ)に入居する内需志向型の企業も本制度の利用対象となった。

今回、当該送金の新たな上限額(10万ドル)が規定されたことで、例えば、年間売り上げが500万ドルの企業の送金上限額は、1%相当額の5万ドルと10万ドルのうち高い方の10万ドルとなる。年間売り上げが5,000万ドルの場合の送金上限額は、1%相当額の50万ドルと10万ドルのうち高い方の50万ドルとなる。つまり、年間売り上げ1,000万ドル未満の企業に対する実質的な上限額の引き上げ(統一化)を意味する。これは当該送金手続きの簡素化が目的とされているが、海外送金規制の一部が緩和されたとも言える。なお、当該送金に際しては、1企業につき1銀行(各送金者による指定)で利用が可能だと外国為替取引ガイドライン〔10章26(a)〕に規定されている。

当地で国内消費者向けに化粧品などの製造・販売を手掛けてきたロート製薬バングラデシュ法人のプロディップ・ダッス社長は今回の措置を受け、「煩雑なバングラデシュからの海外送金で今回、具体的な上限金額を設定したことによる手続きの簡素化は、企業の送金を円滑にする効果を持つ可能性がある。ただし、各市中銀行が正しい運用を行うことが求められ、当該送金を行う際には注意が必要だろう」と話す。また、当地の金融事情に詳しい日系企業関係者は「特定の海外送金の累積額を送金者ごとに正確に把握し、管理することは各市中銀行の実務として相応の負担が発生すると思われ、送金簡素化のネックになる可能性がある。また、送金の累積期間の定義も明確でなく、原則として各送金者の会計年度を1年間とするなどと示した方がより明確になる」と指摘している。

(注)製品の製造、加工、組み立てのいずれかに携わる企業。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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