EU首脳や欧州産業界、バイデン米大統領就任を歓迎

(EU、米国)

ブリュッセル発

2021年01月21日

米国のジョー・バイデン氏が大統領に就任した1月20日、EU首脳や欧州産業界からEU・米国間の新たな関係構築に向け、就任を歓迎する声が相次いだ。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は同日、欧州議会本会議でのスピーチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、バイデン大統領の就任に触れ、「われわれはアメリカの新しい夜明けの時を待ち望んでいた。最も古くからの最も信頼できるパートナーと新しいスタートを切る準備はできている」と期待感を表し、12月2日に欧州委が提示した米国との新たな協力関係の構築に向けたアジェンダ(2020年12月4日記事参照)がその土台になると説明した。スピーチで同委員長は気候変動に関して、米国のパリ協定への復帰を歓迎するとともに、協力を深めるべき分野として排出権取引やカーボン・プライシングを挙げた。また、デジタル分野については、データ保護や表現の自由とその制約に関する大手インターネット企業への規制のあり方に言及し、こうした課題を議論する手段として前述のアジェンダの中で欧州委が提唱する「EU米国貿易・テクノロジー評議会(EU-US Trade and Technology Council)」の設立構想を紹介した。

関係再活性化に向け、バイデン大統領を欧州理事会に招待

欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長も20日、「過去4年にわたり大いに損なわれたEU米国関係を再活性化させる出発点となる」などとする声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。両者が取り組むべき優先課題として、(1)多国間協力の推進、(2)新型コロナウイルスへの対応、(3)気候変動問題への取り組み、(4)経済の再構築と公正な貿易の確保、デジタル化の促進、(5)平和と安全保障の5点を挙げた。また、同日中にも新大統領をブリュッセルでの欧州理事会特別会合に招待すべく連絡する意向を表明した。

経済界では、欧州産業連盟(ビジネスヨーロッパ)が20日、バイデン大統領の就任により「両者の関係がより協調的で、対立の少ないものとなることを期待する」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表、EUと米国に共通の中期的な課題として、対中関係やWTO改革、気候変動、デジタル化を代表例に挙げた。さらに、産業界ならでは論点として、長期化する双方の航空大手のエアバスと米ボーイングへの補助金をめぐる貿易紛争の打開を求めた。EU米双方が補助金に対する報復関税の撤廃もしくは少なくとも停止に合意し、紛争解決に向けた交渉に取り組むことができれば、「新しい関係の始まりを象徴する重要なシグナルとなる」と述べた。

(安田啓)

(EU、米国)

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