ケリー米特使、気候変動対策への協調呼びかけとともに、中国を牽制

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月29日

米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使は1月27日、世界経済フォーラム(WEF、通商:ダボス会議)のオンライン形式のセッションに参加し、気候変動対策の緊急性を訴え、米国の環境政策の方向性を述べるとともに、各国協調を呼びかけた。また、中国の環境政策の不透明性を指摘し、世界中の石炭火力発電所の70%に中国が資金を提供していると述べて、その行動を牽制した。

セッションのテーマは「気候変動に対して行動を起こす(オプション2)」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、ケリー特使は冒頭のスピーチで次のとおり述べた。

  • 私たちは行動を起こすべき決定的な10年を迎えており、緊急の必要性(悲劇的な山火事の発生など)は私たちの身近に生じている。
  • この事実をジョー・バイデン大統領は完全に理解しており、パリ協定への復帰など、就任1週間で多くの環境保護に関する大統領令に署名した。われわれは(ドナルド・トランプ前政権下の)4年間を許しがたいほど無駄にしてしまったことを認識しており、「謙虚さ」をもって再び参加している。
  • 気温が産業革命以前のレベルから1.5度を上回らないようにするために、2030年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を半分に削減しなければならないが、市場メカニズムの活用と政治的意思により、それは達成可能だ。
  • 次回COP26グラスゴー会合(注)の目標は、30年後の目標に満足するだけではなく、それに向けてのロードマップを策定すること。全ての異なるセクターで必要とされる種類の対応を呼び起こす最後で最良のチャンスだ。

また、セッションの中で中国の環境政策に触れて、次のとおり指摘した。

  • 中国は2060年までにカーボンニュートラルを目指すと表明しているが、どうやってそこにたどり着くのかはまだ明らかではない。中国が今後その行程を明らかにして共有することによって、われわれと協力できることを願っている。
  • 中国は(環境問題に関して)多くのことを成し遂げているが、「一帯一路」構想では世界中の石炭火力発電所の70%にも資金を提供している。

さらに、ケリー特使は同日のホワイトハウスでの記者会見で、今後の中国との関係をどのように考えているかを問われ、「知的財産の窃取、市場アクセス、南シナ海問題など、いくつかの非常に重要な問題に関して中国と深刻な考え方の違いがある」「こうした問題と気候変動問題は取引されるものでは決してない」と述べ、気候変動対策と米中間の諸課題は切り離して対処すべきとの考え方を示した。

(注)2021年11月に英国グラスゴーで開催予定の国連気候変動枠組み条約締約国会議。

(宮野慶太)

(米国)

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