米商務省、情報通信技術のサプライチェーン保護の規則案を公開、パブコメも募集開始

(米国)

ニューヨーク発

2019年11月27日

米国商務省は11月26日、大統領令13873号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、米国の情報通信技術・サービス(ICTS)のサプライチェーンを保護するための規則案を公開し、それに対するパブリックコメントの募集開始を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式には、11月27日の官報で公示する予定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだ。

高まる情報通信インフラ保護の問題意識

トランプ大統領が5月15日に署名した大統領令13873号では、商務長官に対して150日以内に、米国の情報通信技術・サービス(ICTS)に関するサプライチェーンを「外国の敵対者(foreign adversary)」から保護するための規則案を発表するよう指示していた(2019年5月16日記事参照)。この背景には、情報通信インフラは安全保障の根幹である一方、近年、国外からのスパイ行為や妨害行為の格好の標的になっているとの政権の問題意識の高まりがある。例えば、米国連邦通信委員会(FCC)は11月22日、米国の通信ネットワークにとって安全保障上の脅威となる企業(注1)からの調達を、一部停止させる規制を採択している。

事実に基づくケース・バイ・ケースの判断を採用

商務省の規則案によると、禁止される取引は「いかなる個人・法人による、ICTSの買収、輸入、移転、導入、売買または利用を含む取引で、かつその取引が次の要件を満たすもの」としている。

  1. 外国または外国人が何かしらの利害関係を持つ資産を含み、
  2. 外国の敵対者に所有、支配、またはその管轄・指示に従属する主体によって設計、開発、製造もしくは供給されたICTSを含み、
  3. 幾つか特定の有害な結果を招く「過度なリスク(an undue risk)」もしくは、国家の安全保障もしくは米国民の安全に対する「容認できないリスク(an unacceptable risk)」をもたらすもの

商務長官はこれらの要件に照らし合わせて、懸念のある取引に対して「ケース・バイ・ケースで事実に特化したアプローチ(case-by-case, fact-specific approach)」をとるとしている。よって、現段階では、特定の技術分野や集団をまとめて規制の対象とすることは想定されていない。これは、意図せずにリスクのない取引を規制して、イノベーションを抑制することがないようにとの趣旨だ。商務長官が禁止の要件に合致すると評価した場合、当該取引の関係者に事前の予備的な通知を行い、通知を受け取った関係者は30日以内に、反論もしくはリスクを軽減する提案を行うことができる。商務長官はそれを受理してから30日以内に、当該取引を(1)禁止とするか、(2)禁止としないか、もしくは(3)リスクを軽減する措置と対応期限を求めるか、判断するとしている。

パブリックコメント期間は30日間

商務省は、「外国の敵対者」の定義(注2)は行政府の裁量に委ねられているとしつつも、規則案に対するパブリックコメントを求めるとしている。例えば、特定の技術分野や集団を、規則案が定義するリスクを喚起しないゆえに適用除外とすべきであれば、その理由を説明するよう求めている。パブリックコメントは以下のいずれかの形態で、官報公示から30日間受け付けられる(注3)。

(1)連邦政府のポータルサイト「http://www.regulations.gov」のドケット番号DOC-2019-0005外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでの提出(注4)

(2)eメールのタイトルに「RIN 0605-AA51」を含めた上で、ICTsupplychain@doc.gov宛てに提出

(3)以下の宛先に資料を郵送

Henry Young, U.S. Department of Commerce

ATTN: RIN 0605-AA51

1401 Constitution Avenue, N.W., Washington, DC 20230

(注1)現時点では、中国の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)のみが規制対象だが、今後、対象企業が追加される可能性がある(2019年11月25日記事参照)。

(注2)規則案では、「商務長官が、大統領令13783号の目的にとって、米国の安全保障もしくは米国民の安全にとって深刻な害となる、長期間の継続的な、または重大な事例にかかる行為に関与したと判断した、いかなる外国政府もしくは外国の非政府主体」とされている。

(注3)官報が予定どおり11月27日に公示された場合は、12月27日が期限となる。官報の日付にかかるルール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注4)この場合、提出内容は公開が前提となるため、企業秘密も提出する場合は(2)か(3)の方法をとる必要がある。

(磯部真一)

(米国)

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