教育・研究省、グリーン水素プロジェクトに総額7億ユーロ助成

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年01月21日

ドイツ教育・研究省(BMBF)は1月13日、水素技術関連の研究・実証プロジェクト3件に対し、2025年までに総額7億ユーロを助成すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。プロジェクトはそれぞれ、(1)水素製造の電解装置、(2)洋上での水素製造、(3)水素の運搬に関するもの。いずれも再生可能エネルギーを活用して製造されるいわゆる「グリーン水素」をドイツとして推し進めるために必要なものだ。

連邦政府は2020年6月、「国家水素戦略」を採択、水素技術の市場を立ち上げるべく、総額90億ユーロの予算を確保した(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)。今回の3研究・実証プロジェクトへの助成は、この予算から支出される。BMBFによると、プロジェクト3件には、発表時点でドイツの全16州から230を超える企業・研究機関が参加するという。

プロジェクト「H2GigaPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」は水素電解装置の量産化を目指すもの。連邦政府は「国家水素戦略」で、国内の水素電解プラントを2030年までに5ギガワット(GW)、2040年までに10GW規模まで拡大する目標を掲げている。水素電解装置は既に市場投入されているものの、その多くは個別生産が多く費用がかさむ。本プロジェクトでは、装置の量産化を実現することで価格を下げ、その結果、製造された水素の価格も下げることを目指す。本プロジェクトには112の企業・研究機関が参加し、化学・バイオ技術機構(DECHEMA)が取りまとめ役となる。

プロジェクト「H2MarePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、洋上風力発電での発電工程に、グリーン水素やメタンなどの生産を組み込むことで効率のよい水素生産を行う。特徴は、洋上風力発電施設に水素電解装置を組み込み、洋上で水素を生産する点だ。教育・研究省によると、世界初の取り組みだという。洋上風力は陸上風力に比べ、安定してより多くの発電が可能とされる。また、洋上風力発電施設に水素電解装置を組み込むことで、インフラ費用を削減でき、その結果、水素の価格も抑えられる。本プロジェクトには33の企業・研究機関が参加し、シーメンス・エナジーが取りまとめ役となる。

プロジェクト「TransHyDEPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」は水素の輸送方法を研究・実証するもの。「国家水素戦略」でも「将来のグリーン水素の需要を全て国内生産では賄えない」としており、水素生産地から離れた消費地への安全で効率的な輸送方法が求められる。本プロジェクトでは、高圧タンクでの輸送、液化しての輸送、ガスパイプラインを使った輸送、アンモニア、LOHC(注)を活用した輸送などが研究・実証される。また、水素輸送技術に関する規則や安全基準なども検討する。本プロジェクトには89の企業・研究機関が参加し、マックスプランク化学エネルギー変換研究所(MPI CEC)、エネルギーインフラストラクチャー・地熱システム(IEG)研究所とRWEリニューアブルズが取りまとめ役となる。

(注)液体有機水素キャリア(Liquid organic hydrogen carriers)の略。化学反応によって水素を吸収・放出できる有機化合物。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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