ドイツ・英国間の物流は順調、規制対応などに懸念

(ドイツ、英国)

ベルリン発

2021年01月14日

英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間が終了し、英国がEU単一市場と関税同盟から完全離脱した1月1日以降、国際郵便センターや空港の通関手続きのいずれも滞りは発生しておらず、ドイツと英国間の物流に今のところ大きな混乱は生じていない。1月5日付の「フランクフルターアルゲマイネ」紙によると、フランクフルト空港では57人のブレグジット対応専門の税関職員を配置、また、業務が集中し遅延が生じそうな場合、電子通関システムを活用して、その税関を他の税関にいる職員が遠隔支援できる体制を構築するなどの準備を整えてきたという。

ドイツ北部のクックスハーフェン港は、取扱貨物の約70%が英国へのトランジットが占める。このため、英国発着の貿易に関わる同港の海運会社が、ブレグジット後に英国などの第三国向けの通関手続きを迅速に行えるよう、AEO事業者ステータスの更新を行ったと同港は発表している。また、海運業者やその他の港湾関係者で構成されるクックスハーフェン港協会(HWG)は、電子通関システムATLAS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに対応した電子インターフェースの導入と職員の訓練に24カ月を費やし周到に準備を重ねてきたという。

交通専門ニュースサイトのドイツ交通新聞(DVZ)が行った、複数の企業へのブレグジットの影響に関するインタビューでは、物流に問題が生じているケースは報告されていない。ドイツの大手化学メーカーは、事前に移行期間終了後の貨物輸送量を緩和する措置を講じており、EUと英国間の通関手続きは順調だが、今後は数カ月の期間に遅延が発生するリスクがあるだろうと予測している。EUのREACH規制(注)から英国版REACH規制への移行についても、現状、問題は生じていないという。また、ドイツの物流会社によると、同社の通常の対英輸出量は全体の5%だが、移行期間前に英国での在庫確保を行う企業が急増したため2020年12月には20%に上昇、年明け以降の状況は緩和しているが、貨物量が平常化する時期は見通せないという。さらに、複数の物流事業者は、アイルランド向けの海上輸送は英国を経由しないルートを確立しているという(1月7日付DVZ、12日更新)。

在ドイツ日系企業で混乱などが生じているといった情報は、ジェトロに寄せられていない。EU・英国間で通商・協力協定に合意が成立しなかった場合を含む複数のシナリオを準備し、英国とEU双方での在庫の積み増し、サプライチェーンや取引条件の変更などの事前の対策を講じていたことが奏功しているという。ただし、今後は、英国のREACHやCEマークなどの新規制への対応やコスト増が懸念事項として挙げられた。

(注)化学物質の使用、製造、販売、輸入に対するEUの規制。移行期間終了後に英国へ化学物質を輸出するためには、UK REACH(2020年9月8日記事参照)への準拠が必要になる。

(中村容子)

(ドイツ、英国)

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