VW、EV向け自動充電ロボットの試作機を公開
(ドイツ)
ミュンヘン発
2021年01月12日
ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は12月28日、立体・地下駐車場などに駐車した電気自動車(BEV)を自動で充電するロボットの試作機を公開した。EV普及のためには、充電施設のさらなる拡充がカギとなる。VWグループでは、傘下の部品部門が統括して充電施設・システムの研究開発を進めていく。
今回の試作機は、2019年12年に発表していたアイディアを具現化したもの。充電場所は欧州の都市部などでよくみられる立体・地下駐車場を想定する。機器は、充電ロボットおよび移動式のエネルギー貯蔵装置から成る。運転手がスマートフォンのアプリなどで充電の指示を行うと、ロボットが貯蔵装置を、充電すべきEVの位置まで自動で移動させ、充電用コネクターをEVの充電口に差し込み、急速充電を行う。充電完了後は、ロボットがエネルギー貯蔵装置のプラグを抜き、元の場所に戻す。貯蔵装置自体は複数あるため、複数のEVの同時充電が可能だ(一連の流れは動画で閲覧可能)。
駐車場での充電には通常、ウォールボックス(Wallbox)と呼ばれる充電装置を設置することになるが、地下駐車場の場合、場所が狭く設置が難しい場合も多く、設置台数が限定される。また、ウォールボックスがある場所でしか充電ができない。今回の試作機であれば、狭い地下駐車場でも利用可能で、かつ、どこにEVを駐車しても充電できる。
VW部品部門担当トップのトーマス・シュマル最高経営責任者(CEO)は今回の試作機について、「あくまでも多くのアプローチのうちの1つだが、もっともビジョンがあるものの1つ」とコメントしている。同社は、直流ウォールボックスや移動式充電施設など他の充電方法も並行で開発し、適材適所で提供していく。VW部品部門は、グループ全体の戦略的な部品の開発・製造を所管、約7万5,000人が勤務し、全世界に60を超える工場を有する。同部門では、グループ全体の充電施設・システムの開発・製造も担当している。
ドイツでは、低排出ガス車〔BEVおよびプラグインハイブリッド車(PHEV)〕の新規登録が急増している。一方で、ドイツ自動車産業連合会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長が「私用、職場、公共の充電施設をこれまで以上に増やす必要がある」と指摘するなど、充電施設の不足が懸念されている(2020年12月17日記事参照)。
(クラウディア・フェンデル、高塚一)
(ドイツ)
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