アジア日系企業の景況感、新型コロナで過去最低も、中国の悪化度合いは緩やか

(アジア、オセアニア)

アジア大洋州課

2020年12月23日

ジェトロが8月から9月に実施した「2020年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、アジア・オセアニア地域全体の景況感が過去最低を記録し、20カ国・地域の全てでマイナスとなったことがわかった。全ての国・地域で景況感がマイナスとなったのは調査開始以来で初めて。景況感を表すDI値(注)は、アジア・オセアニア地域全体でマイナス40.7と過去最低を更新(添付資料図1参照)。2019年から顕在化した米中対立など通商環境の変化によるマイナスの影響に加え、新型コロナウイルスによる国・地域内外での市場喪失の影響が追い打ちをかけた。

国・地域別にみると、中国の日系企業の景況感はマイナス23.4ポイントと悪化はしたものの、前年からの落ち込みは19.6ポイントと、悪化度合いは他国・地域と比べ緩やかだった。新型コロナウイルス感染の影響は受けたが、早い段階で感染が抑制され、経済活動が再開したことが背景にある。また、黒字企業の割合も全ての国・地域で落ち込んだものの、中国は前年比5ポイント減の63.5%が黒字を維持。この減少幅は調査対象国・地域の中で最も少なかった。

一方、依然として感染が拡大するインドネシアは、地域内ではマイナス65.9ポイントで最も深刻。これに、タイ(マイナス57.4ポイント)、フィリピン(マイナス51.2ポイント)、インド(マイナス50.3ポイント)がマイナス50ポイントを超えて続いた。インドネシア、タイ、インドでは9割前後の企業が「現地市場での売り上げ減少」、フィリピンでは6割の企業が「輸出低迷による売り上げ減少」を悪化の理由として挙げた。

新型コロナウイルスの影響からの正常化、中国で先行、7割が2021年前半の見込み

ビジネスが正常化する時期として、8割の企業が2021年中を見込むのに対して、中国では67.2%が2021年前半までとしている(添付資料図2参照)。このうち、43.9%の企業が2020年内の正常化を見込んでおり、調査対象国・地域の中でも際立った回復ぶりを示している。

今後1~2年の事業拡大意欲、過去最低を更新

今後1~2年の事業展開の方向性で「拡大」と回答した企業の割合は、2019年調査から多くの国・地域で低下し始めていたが、2020年調査では全ての国・地域で落ち込み、過去最低を更新した(添付資料図3参照)。米中対立など通商環境の変化による影響に加え、新型コロナウイルスの影響による需要喪失が事業拡大意欲にもマイナスに作用していることが読み取れる。

一方、このような厳しい状況の中でも、過半の企業が事業拡大意欲を保ったのは、インド(50.9%)、パキスタン(53.5%)だった。インドではそのうち84.2%の企業が「現地市場での売り上げ増加」を、パキスタンでは73.9%の企業が「成長性、潜在力の高さ」を拡大の理由とした。

(注)Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合(%)から「悪化」する割合を差し引いた数値

(三木貴博)

(アジア、オセアニア)

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