ロシアEC大手オゾンが米ナスダック市場に上場、約10億ドル調達

(ロシア、米国)

欧州ロシアCIS課

2020年12月03日

ロシアの電子商取引(EC)大手オゾンホールディングス(以下、オゾン)は11月24日、米国の新興企業向け株式市場のナスダック(NASDAQ)で米国預託株式(ADS)の新規株式上場(IPO)を行い、約10億ドルを調達した。ロシア企業による海外市場での巨額の資金調達事例は3年ぶり。

オゾンはロシア3位の規模のECプラットフォームで、2019年の流通取引総額(GMV、注1)は808億ルーブル(約1,131億円、1ルーブル=約1.4円)に上る。「新型コロナ禍」を追い風に取引額を急激に伸ばしており、2020年1~9月のGMVは1,216億ルーブル(前年同期比2.4倍)に達している。

今回上場したのは、ロシア事業を管轄するキプロス籍の持ち株会社。主要株主は、ロシアの財閥AFKシステマと民間ベンチャー投資大手バーリング・ボストーク(2019年2月21日記事参照)。今回の株式公開に当たり、オゾンは3,300万ADSを発行した(注2)。1ADSの設定価格は30ドルのため、今回のIPOでは9億9,000万ドルを調達した。オゾンはさらに、株式上場後30日以内に追加で495万ADSを発行するとしている。ロシア企業によるIPOを通じた海外市場での巨額の資金調達事例は、2017年にロンドン証券取引所(LSE)に上場したEn+グループ(注3)以来。

ロシア主要ビジネス紙「ベドモスチ」(11月24日)によると、オゾンは今回調達した資金を物流インフラ整備に充てるとしている。オゾンは現在、モスクワ、サンクトペテルブルク、トベリなどに物流拠点を有しているが、2020年にモスクワ郊外に新しい倉庫施設を建設する契約を締結した。大手行ガスプロムバンクのシニアアナリストのマラト・イブラギモフ氏は「物流インフラ整備がEC市場における長期的なシェア拡大のカギとなる」と指摘。調査会社インフォライン・アナリティカのミハイル・ブルミストロフ社長も「物流の改善が消費者への配送時間の短縮化に寄与するだけでなく、ECプラットフォームの成長に不可欠な出品者数と掲載製品数の増加に貢献する」と述べている。

(注1)ECプラットフォームで消費者が購入した商品の売り上げの合計額のこと。

(注2)1ADSは、オゾンホールディングスの普通株1株に相当する。

(注3)新興財閥オレグ・デリパスカ氏が最大株主。LSE上場によって15億ドル調達した。

(齋藤寛)

(ロシア、米国)

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