バングラデシュ初の2国間特恵貿易協定(PTA)、ブータンと締結

(バングラデシュ、ブータン)

ダッカ発

2020年12月21日

バングラデシュは12月6日、同国にとって初となる2国間の特恵貿易協定(PTA、注)をブータンと締結した。同協定の内容はまだ対外公表されていないものの、現地報道によると、同協定により、バングラデシュからブータンへの輸出に際しては子供服や紳士服、ジュートや皮革製品など約100品目、ブータンからの輸入に際してはオレンジなどの果物、蜂蜜、木製家具など34品目の輸入関税が無税となる。両国間の合意に基づき、免税の対象品目をさらに増やすことも可能としている。

商業省によると、両国は2009年の2国間貿易に係る合意書締結により、ブータンへの輸出ではHSコード6桁ベースで90品目、ブータンからの輸入では18品目が免税となっており、今回のPTA締結は、2009年の合意書締結の枠組みを発展させた位置付けとみられる。また、両国は南アジア自由貿易地域(SAFTA)枠組み協定、南アジア特恵貿易協定(SAPTA)に加盟しており、各協定により、両国間の貿易で一部品目については関税率の引き下げが行われていた。

バングラデシュの2019/20年度(2019年7月~2020年6月)貿易統計によると、対ブータン貿易は輸入超過(輸入額が輸出額のおよそ9.3倍)の中、同国への輸出額は前年度(2018/19年度)比でマイナス42.1%と、主要輸出相手国との比較でも減少率が高い(添付資料表1参照)。輸出額を主要品目別にみると、医薬品などを含む医療用品は前年度比マイナス80.2%で、最も減少幅が大きい(添付資料表2参照)。ブータンは主要な貿易相手国ではないものの、輸入額も前年度比17.4%減と落ち込んでいる状況だ。バングラデシュ側の統計では確認できないものの、報道によると、ブータンからは化学薬品やパルプ、果物、野菜などを輸入している。

ハシナ首相は6日、今回のPTA締結式で「新型コロナウイルスによる厳しい状況を打開するため、バングラデシュはブータン、南アジア諸国をはじめ、海外との経済協力関係を深めていく。ブータンとの連携領域は貿易にとどまらず、観光や水力発電、農産物加工、ICT(情報通信技術)、教育、水資源など多岐にわたっている。ブータンとの協力関係はバングラデシュ独立の年(1971年)にまでさかのぼり、地政学的にも重要な国だ」と述べたと報じられている。バングラデシュは2024年には後発開発途上国(LDC)から卒業する予定だ。そのため、今回のPTAは、2027年以降にバングラデシュがLDCに対する特別特恵関税(LDC特恵措置)の適用対象国から除外されることを念頭に置いた2国間貿易協定締結の「手始め」とされる。政府はネパールやインドネシアとのPTA締結や、先進国とのFTA締結に向けた準備も進めているもようだ。

(注)特恵貿易協定は、特定国間の貿易で一部品目に係る差別的(一方的)な優遇処置を行うもので、広義では先進国が開発途上国に対して適用する一般特恵関税制度(GSP)も含まれる。物品の関税やサービス貿易の障壁などを相互に削減・撤廃することを目的とする自由貿易協定(FTA)よりも限定的、かつ一方的な要素が大きい貿易協定。

(山田和則)

(バングラデシュ、ブータン)

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