社会科学院、2021年の経済成長率を7.8%前後と予測

(中国)

北京発

2020年12月25日

中国社会科学院は12月14日に「経済青書」を発表し、2021年の中国のGDP成長率について、7.8%前後となるとの見通しを示した。比較基準となる前年の数値が低いことや、国内外の不確実性による影響を踏まえて予測した。社会科学院工業経済研究所の李雪松副所長は、2021年は新型コロナウイルスの感染状況による予想外のリスクが生じる可能性があり、7.8%前後という数値はあくまでも参考値とコメントした(「時代週報」12月14日)。

また、2020年の主要経済指標については、持続的な回復を見せており、中国経済が中長期的に良い方向に向かっていると評価した上で、今冬の中国における新型コロナウイルス感染が局地的・散発的な規模にとどまり、かつ効果的に対処された場合、2020年の経済成長率は2.2%前後となると予測した(添付資料表1参照)。一方、社会科学院の蔡昉副院長は、第三次産業や消費、収入といった需要サイドの回復が遅れているため、供給サイドと需要サイドのバランスを取り、需要と供給が相互に促進するようには、国内の大循環を主体とする国内と国際の2つの循環(双循環)が相互に促進する新たな発展局面の構築を加速する必要があると指摘した。

青書では、2021年の経済運営に対する建議として、積極的な財政政策の質と効率性を高め、持続可能性をより重視すること、穏健な金融政策の柔軟性を高め、正確性や時間当たりの効果をより重視すること、雇用優先政策を堅持すること、安定成長とリスク防止のバランスを取ることなどを挙げている。

そのうち、財政政策については、新型コロナウイルスの流行が有効に抑制された場合、2021年は財政赤字をGDP比で3%前後(注1)とし、専項債(地方特別債)の発行を継続し、感染対策特別国債の発行を停止すること(注2)を主張した。また、積極的な財政政策の質と効率性を高める具体策として、基礎研究開発支出を顕著に増加させること、産業チェーンのレベルを引き上げること、ボトルネックとなるプロジェクトへの支援を強化すること、資本・リソースを戦略的なコア分野へ誘導すること、金融機関による民営企業や中小企業への支援を奨励することなどを提案している(「新浪財経」12月14日)。

青書では、IMFと世界銀行、OECDがそれぞれ2021年の中国経済成長率の予想値を上方修正した点について、中国の経済成長に対する国際社会の信頼を示したと指摘した(「中国青年網」12月15日、添付資料表2参照)。

(注1)2020年は、積極的な財政政策をより積極的かつ効果的なものにする必要があるとし、財政赤字のGDP比を前年から0.8ポイント引き上げ3.6%に設定した。

(注2)2020年は、専項債を前年比1兆6,000億元(約25兆6,000億円、1元=約16円)増の3兆7,500億元分発行したほか、新型コロナウイルス対策のために1兆元分の特別国債を発行した。

(張敏)

(中国)

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