新型コロナ禍でキャッシュレス化が進む

(スウェーデン)

ロンドン発

2020年12月10日

スウェーデンで新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、支払い手段としてのキャッシュレス化が加速している。

スウェーデン中央銀行が10月29日に発表したレポート「スウェーデン人はこのように支払いをした(2020年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、過去1カ月間で現金を使用したという回答者は50%で、2012年の93%と比較すると現金離れが進んでいる。反対に、スマートフォンの決済・送金アプリケーションのスウィッシュ(Swish)による支払いが増加しており、75%が過去1カ月間にスウィッシュで支払ったと回答した。「新型コロナ禍」の中、オンラインでの購入が加速していることに加え、非接触型のスウィッシュ支払いを高齢者も選択するようになったことがある。

さらに、4月には非接触支払いの上限が200クローネ(約2,400円、1クローネ=約12円)から400クローネに引き上げられたことにより、実店舗でのキャッシュレス支払いをする人が増えたと中銀は分析している。また、大手スーパーや大型実店舗でキャッシュレス専用レジやセルフレジを増加したことや、現金支払いを断る実店舗が出てきていることなども影響したとみられる。

中銀は、現金離れが進む中、将来に備えるために電子通貨「エー・クローナ(e-krona)」発行の可能性を調査しており、デジタルキャッシュに関して他国の中央銀行と協力し、通貨間の支払いを改善していく予定としている。また、スウィッシュのような即時支払いについても、中銀のシステムを介するよう準備している。

一方、65歳以上の高齢者の半数以上が依然としてキャッシュレス化に否定的なことを踏まえ、中銀は現金決済を希望する者に対してはその選択肢が与えられるべきとし、危機時においても金融システムを維持する必要があるとし、引き続き現金を利用できるようにすべきと考えている。

キャッシュレス化が進む中、スウェーデンの銀行では、オンラインサービスを利用する顧客の増加と支店への訪問客の減少に伴い、この6年間にスウェーデン全体で3分の1の支店が閉鎖された。また、ストックホルム市内の銀行では、現金を取り扱う支店数を減らすだけでなく、大幅な支店併合や貸金庫サービスの停止を進めており、さらなる現金取り扱いの停止を加速させている(「Mitti i Stockholm」紙11月6日)。

(篠崎美佐)

(スウェーデン)

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