WTOレポート、新型コロナ禍で貿易制限措置の件数が減少

(世界)

国際経済課

2020年12月17日

WTOは12月11日、WTO加盟国(以下、加盟国)の貿易関連措置に関するモニタリングレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。同レポートによれば、2019年10月中旬から2020年10月中旬までの1年間に、加盟国が新たに発動した貿易制限措置は89件、貿易緩和措置は88件と、いずれも2012年以降で最も少ない数となった(注1、2)。

このうち、輸入制限措置の対象となった物品の貿易額(輸入ベース)は4,409億ドルと、前年同期(7,469億ドル)から減少した。輸入制限措置の対象となった主な商品は、電気機械およびその部品、機械設備、貴石および貴金属だった。また、WTOの推計によると、2009年以降に加盟国が発動した輸入制限措置の対象額(累計)は2019年末時点で1,646億ドルと、世界の輸入の8.7%に相当する規模になった(注3)。WTOは、2020年も輸入制限措置の対象額は増加し、制限の撤廃は最小限にとどまるとの見方を示している。他方、輸入緩和措置の対象となった物品の貿易額は7,313億ドルで、前年同期(5,447億ドル)より増加した。

WTOは、2019年10月中旬から2020年10月中旬までの貿易制限措置・緩和措置の件数が減少した要因として、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)による世界貿易の減少や、各政府の注意が新型コロナ対応に向けられたこと、同レポートの集計期間の早期に輸入制限措置のカバレッジを引き上げた主要2国間貿易の緊張が相対的に停滞したことや、貿易の流れを維持するための取り組みを挙げた。

新型コロナに関連した措置の件数と対象となる貿易額は、貿易制限措置が140件(1,798億ドル)、貿易緩和措置が195件(2,272億ドル)だった(注4)。件数・金額のいずれにおいても、緩和措置の規模が制限的措置の規模を上回った。なお、WTOによると、貿易制限措置のうち輸出禁止措置が90%を占めるという。また、新型コロナに関連した措置の多くは一時的なもので、貿易制限措置の39%、貿易緩和措置の18%は2020年10月中旬までに無効となっている。

(注1)貿易救済措置および新型コロナに関連した措置はこの件数に含まない。貿易制限措置の件数は、輸出入の両方を含む。なお、WTOは2012年以降、貿易救済措置を除いた貿易制限措置の動向を発表している。

(注2)2012~2019年の措置の導入件数は、各年の1~12月までの合計。

(注3)WTOは、大部分の一時的な措置が想定期限を超えて有効となっていることや、加盟国から通報された措置に対する変更の報告を受けていないケースがあるため、輸入制限措置の対象額は貿易モニタリングデータベースに基づく推計値と述べている。

(注4)新型コロナに関連した措置の対象金額は、2019年の貿易額に基づく推計値(輸出を含む)。

(柏瀬あすか)

(世界)

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