通商環境変化の影響、香港の日系企業で悪化が顕著、ベトナムなどではプラスも

(アジア、オセアニア)

アジア大洋州課

2020年12月23日

ジェトロが8月から9月に実施した「2020年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によると、2019年に顕在化した米中対立などの通商環境の変化による業績への影響は、北東アジアを中心にやや悪化しつつ継続し、香港でマイナスの影響がとりわけ顕著なことがわかった。一方、ベトナム、インド、バングラデシュなどでは、通商環境の変化がプラスに作用している。

2019年に顕在化した米中対立などの通商環境の変化による業績へのマイナスの影響は23.1%と、前年の19.7%から3.4ポイント悪化。特に、香港では前年比9.0ポイント悪化し、過半に迫る46.3%の企業がマイナスの影響があるとした(添付資料図参照)。米中貿易摩擦の影響で中国の顧客企業による米国向けの輸出が減少、中国からASEANなど他国・地域に生産が移管されることによる販売減少などの回答が目立った。

加えて、オーストラリアでもマイナスの影響が31.7%と、前年の17.5%から倍近い14.2ポイント増加した。この背景には、主に中国・オーストラリア間の通商関係の悪化があるとみられる。回答結果からは、中国側の石炭や牛肉などの輸入制限措置の影響が読み取れる。

ベトナムなどでは通商環境の変化がプラスに作用、前年比増

ベトナム、バングラデシュ、インドでは、通商環境の変化による業績へのプラスの影響が10%を超え、前年と比べても顕著に増加した。ベトナムは前年から8.2ポイント増の15.3%、バングラデシュは同2.9ポイント増の13.8%、インドは同6.6ポイント増の10.5%だった。

ベトナム、バングラデシュの回答結果からは、米中貿易摩擦による両国への生産シフトがプラスに働くとする回答が多い。インドでは、中国からの生産シフトによるプラスの影響に加え、両国の関係悪化を背景に、インドへの中国製品流入が減少することによる日本製品購入増などのプラスの影響があるとする回答が目立つ。なお、ベトナムでは2020年8月に発効したEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)によるプラスの影響を指摘する声もあった。

(三木貴博)

(アジア、オセアニア)

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