企業の吸収合併による刑罰の移転について破棄院が新解釈の判決

(フランス)

パリ発

2020年12月03日

フランスの司法訴訟に関する最高裁判所に相当する破棄院は11月25日、「企業の吸収合併に伴い消滅した企業の刑事罰である罰金や没収などの刑事責任は、吸収した企業に移転し、刑事責任を問われる可能性がある」との新たな解釈の判決を下した。

ただし、刑事責任の移転は、株式会社の合併に関するEU指令の適用範囲内の吸収合併のみに適用されるため、対象となる企業は株式会社(société anonyme)、単純型株式会社(société par actions simplifiée)に限られ、EU司法裁判所の解釈に基づき、資産的性質の刑罰のみが対象となる。

破棄院は、これまで「自己の行為以外の刑事責任は負わない」という刑法の原則により、自然人の死亡で刑事訴追が消滅するのと同様に、吸収した企業の刑事責任移転に反対していたが、最近の欧州人権裁判所の決定に基づき、法人を自然人と同一視することをやめ、吸収した企業内で経済活動が継続するという法人の特徴を優先するとの解釈に方針転換した。

この新たな判例は、法的予見可能性の原則を損なうことがないよう、判決日の2020年11月25日以降に締結された合併取引のみに適用される。

ただし、合併が刑事罰を逃れることを目的としている場合、当該合併は法的に詐欺行為とみなされ、どのような企業形態であっても、資産的性質以外のものを含む全ての刑罰が引き継がれ、また過去の合併事例に対しても遡及(そきゅう)される。

同判例により、企業の合併時に吸収した企業の刑事責任を引き継ぐことになり、フランスにおける今後の企業合併などの戦略に大きな影響を与える可能性がある。

(奥山直子)

(フランス)

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