テキスタイルや電子部品が第3四半期の世界貿易を押し上げ

(世界)

国際経済課

2020年12月09日

WTOは12月4日、2020年第3四半期(7~9月)の製造品の貿易額外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが前年同期比5%減(注1)となったと発表した。伸び率は引き続きマイナスとなったが、第2四半期(4~6月)の同19%減から減少幅が縮小した。主要国・地域での生産再開やロックダウン措置などの緩和により、一部の財貿易が回復したことが背景にある。

商品別にみると、テキスタイルが同24%増、コンピュータなどが11%増、集積回路などの電子部品が10%増だった。テキスタイルはマスクの需要急増により、第2四半期(同10%増)に引き続き伸び率がプラスとなった。コンピュータと電子部品の貿易も、第2四半期(それぞれ同3%増、同8%増)から増加を続けた。

第2四半期から第3四半期にかけて、伸び率の落ち込みが改善した商品も見られた。自動車製品は第2四半期の同53%減から第3四半期は同13%減まで回復した。月次の動向をみると、自動車製品の貿易は7月に前年同月比19%減少したものの、9月には8%減まで改善した。スマートフォンなどを含む通信機器も12%減から第3四半期に2%減となった。ただ、通信機器は9月の貿易が11%減、同月の中国の輸出が13%減となっており、WTOが市場の飽和による貿易鈍化の可能性を指摘している。

マスクなどの個人用防護具(PPE)の貿易は増加を続け、第3四半期の貿易は前年同期比63%増となった。中でもマスクの貿易は約2倍と増加が顕著だった(注2)。

製造品に資源関連諸品や農産品を含む財貿易額全体の伸び率は、第3四半期に前年同期比4%減となった。燃料や鉱業製品が価格下落の影響で28%減と縮小した一方、パンデミックの中でも持続的な需要があった農産品は2%減にとどまった。

サービス貿易額は減速が続き、7月に前年同月比23%減、8月に22%減、9月に17%減となった(注3)。月次の伸び率をみると、夏季にEU域内の旅行に対する規制が解除されたことなどから、サービス貿易の減速は底打ちしたようにみられるが、依然として多くの国・地域で貿易が減速している。各国・地域の月次伸び率は、米国(注4)の輸出が同27%減、輸入が26%減、中国は輸出が8%増とプラスに転じたものの、輸入は18%減だった。日本は輸出が19%減、輸入が5%減だった。WTOは、秋の新型コロナウイルス再流行によりサービス貿易の回復が遅れると指摘している。その一方で、旅行が促進されることから、ワクチンの普及が2021年のサービス貿易回復に貢献するとの見方を示した。

(注1)原資料では小数点以下の表記がない。以下同様。

(注2)マスクの大部分は布製マスクが占める。2020年1~9月に中国から供給されたマスクの割合は60%近くに上る。

(注3)39カ国・地域の速報値ベース。39カ国・地域は世界のサービス貿易の3分の2をカバー。より多くの国・地域をカバーした第3四半期の貿易データは2021年1月に公表の見込み。

(注4)米国のサービス貿易額は季節調整値。

(柏瀬あすか)

(世界)

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