2019年の対中南米投資額は前年比7.8%減、2020年は45~55%減の見込み

(中南米)

サンティアゴ発

2020年12月11日

国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)によると(12月2日発表)、2019年の中南米地域における外国直接投資(FDI)は前年比7.8%減の1,607億2,100万ドルだった。ECLACは主に南米の経済成長率の低迷と原材料価格の下落を減少理由として挙げている(添付資料表1参照)。

2019年のFDI受入額を国別にみると、ブラジルが691億7,400万ドルと最も多く、次いで、メキシコ(293億5,400万ドル)、コロンビア(143億1,400万ドル)、チリ(119億2,800万ドル)、ペルー(88億9,200万ドル)の順だった。ブラジルとメキシコは前年比でそれぞれ11.5%減、22.0%減となったが、両国のFDI受入額を合わせると、中南米全体の6割超を占めている。メキシコを除いた太平洋同盟加盟国(チリ、コロンビア、ペルー)のFDI受入額は前年比で大幅に増加した。中米・カリブ地域では、パナマが前年比7.4%増の58億9,100万ドルで、同地域内で最もFDI受入額が多かった。ガイアナは炭化水素とその関連分野への投資増により、前年比37.6%増の16億9,500万ドルとなった。

FDI受入額を分野別にみると、再生可能エネルギーへの投資が最も多く、金額では210億ドルだった。投資額全体に占める割合は19%で、主にブラジル、チリ、メキシコへの投資が多かった。次いで、ホテル・観光(9%)、金属(9%)、輸送・物流(9%)、自動車・同関連部品(8%)となっている。域内最大の投資案件は、フランスのエンジーとカナダのケベック州投資信託銀行(CDPQ)によるブラジルのトランスポルタドラ・アソシアダ・デ・ガス(TAG)の株式90%を取得した案件で、投資額は86億ドルだった(添付資料表2参照)。他にも主なM&A案件として、米国デルタ航空による中南米最大の航空会社ラタム航空グループの株式20%の取得や、中国企業などによるペルーの大手水力発電企業の買収などが行われた。

中南米への主な投資国は欧州各国と米国で、FDI受入額全体の82%を占めている。国別ではフランス、カナダ、米国の順に多い。中国からの投資は、2017年に域内FDI全体の34%を占めていたが、2019年は9%にまで減少した。

ECLACは、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて世界全体のFDIは前年比で40%減少するとみられるが、中南米地域はそれを上回る前年比45~55%減少すると予想している。

(岡戸美澪)

(中南米)

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