石炭市場の回復を受けて、モアティゼ炭鉱のメンテナンス再開へ

(モザンビーク、ブラジル)

マプト発

2020年11月25日

モザンビーク北部内陸部テテ州のモアティゼ炭鉱で、三井物産と採炭事業を進めるブラジル資源大手ヴァーレは11月17日、同炭鉱施設のメンテナンスを実施すると発表した。メンテナンスは2020年11月~2021年3月を予定しており、メンテナンス完了後の同炭鉱の生産能力は年間1,500万トンとなる見込みだ。同メンテナンスの実施は、当初2020年上半期に計画されていた(2019年12月17日記事参照)が、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、3月にヴァーレ・モザンビークのブラジル人従業員200人以上を本国に帰国させるなどの対策が取られたことにより、延期されていた(2020年5月15日記事参照)。

新型コロナウイルス感染拡大による、世界的な石炭需要の減少と市場価格の下落は、モアティゼ炭鉱事業にも大きく影響してきた。ヴァーレは2020年4月、800万~1,000万トンとしていた同年の同炭鉱での石炭生産目標を撤回した。同炭鉱での2020年1~9月の石炭生産量は前年同期の680万トンから460万トンへ、販売量は同じく670万トンから430万トンに落ち込んだ。影響は、モアティゼ炭鉱のあるテテ州の地域経済にも及んでいる。同州ビジネス評議会のカルロス・カルドーゾ会長は6月、同州で採炭事業に従事するヴァーレやインドのエネルギー大手ジンダル・アフリカが石炭生産の縮小を余儀なくされたことで、下請け、建設、観光セクターなど関連する200以上の地場中小企業が3月以降、閉業せざるをえなかったと述べた。

一方、ヴァーレは2020年第3四半期報告書で、原料炭の国際市場価格の同期終値(1トン当たり)が139ドル(期中平均:114.8ドル)、一般炭は60ドル(55.4ドル)と価格が上昇傾向にあることから、市場は第4四半期以降も回復を続けていくとの見通しを示した。こうした状況を受けて、モアティゼ炭鉱のメンテナンスの再開に踏み切ったとみられる。

(松永篤)

(モザンビーク、ブラジル)

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